10話 感じた恐怖




「今日は炎の呼吸の型を覚えてもらう!」

『はい!』

「その為に…、炎の中に入ってもらう!」

『はい!………………はい?』




そう言うと師範は走り出した。私も慌てて置いて行かれない様に走る。山道を超え、山を登り辿り着いたのは…、



『…………火山!?』

「そうだ!」

『はっ、え!?日本に火山ってあるの!?え!?』

「行ってこい!」

『え?………ぎぁああぁぁああぁ!?』





師範に押され私は炎と溶岩で溢れかえる中に突き落とされそうになり、慌てて刀の鞘ごと脇の崖に突き刺し、刀にぶら下がる。



『……しっ、死ぬかと、思った…、』

「炎を感じられるようになるまで待機!」

『ぅえっ!?…師範!?』

「はははっ!」



そう言うと師範は先に帰ってしまったのか気配が消えた。私は慌てて呼吸で勢いを付けて刺した刀に飛び乗り、一気に上に上がる。



『ほっ、本当にっ、帰っちゃった…』


師範の姿はなく、気配と無かった。私は脱力し私が落ちそうになった中を覗き込む。



『………これ、もしかして刀取りに行かないといけない…?』





師範の稽古は思ったよりも過酷だった。



*******


『も、戻り……、ました…、』


ボロボロの体を引き摺りながら屋敷に戻った名前に、煉獄は腕を組んで見下ろした。


「炎は感じられるようになったか!」

『……き、きっと、』

「……よし!ならば炎の型を使ってみろ!」

『えぇ!?』



突然の煉獄の無茶ぶりに名前は痛む体をビクつかせた。しかし煉獄はそんな名前を気にせずに庭へと移動する。



「握れ」



ガチャンと音を立てて名前の前に放り出されたのは刀だった。名前はゆっくりと刀を握るが、生まれて初めての刀に名前は見ていた漫画を思い出して見よう見まねで背筋を伸ばして刀を両手で握る。



「……刀を振ってみろ」



そう言われ刀を上から下に振り下ろす。その瞬間ブンッと風を切る音が耳を鳴らした。その瞬間、名前は恐怖を感じた。



『……』

「その一太刀で鬼を斬る」

『……』

「…そしてその一太刀で人を殺めることだって出来てしまう」



煉獄の言葉に名前はグッと息を飲む。小さい頃は木の棒を振ってチャンバラをしたものだった。けれど実際の刀を握って感じたのは紛れもない恐怖≠セった。




「……名前」

『師範…、』



いつの間にか膝を付いていた名前の前に煉獄がしゃがみ込んでいた。



「…刀は時に凶器になる」

『……』

「しかし、人を守る為の道具にもなる」



そう言った煉獄の瞳には炎の様な強い意志を感じた。



『……私は、守りたいんです』

「…あぁ」

『……この手で、守りたい』

「……大丈夫だ。君なら」



煉獄は名前に与えた刀を鞘に収めると、刀を名前の膝に置くと、名前の手を刀の上に移動させる。



「俺は君を信じている」

『……はい』



真っ直ぐな言葉に、真っ直ぐな瞳にまるで炎が胸に宿った様に熱かった。





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