SECOND61
全国で決勝まで行くと思って名前は全日程分の休みを取っていたし、新幹線も取ってしまっていた。つまり、時間を持て余していた。
『………来てしまった』
だからなのか名前は烏野が稲荷崎に敗れた翌日、また会場に足を運んでいた。
『……稲荷崎、……稲荷崎、』
トーナメント表を確認して応援席の後ろへと移動すると見知った顔があった。
『……信介?』
「苗字さん?」
応援席には北が居て名前は自然と隣に移動するとアランが北の隣に居り会釈を交わす。
『来てたんだ』
「はい。昨日は来れなかったんですけど」
『見事おたくらの後輩に負けましたよ』
「やから稲荷崎は今日試合あるわけですからね」
『ソウデスネー』
北は不貞腐れた名前を見て少し笑うとコートに視線を落とし、小さく呟いた。
「…やけど、やっぱり見たかったな」
『…烏野に勝つところ?』
「はい」
『…………生意気〜!』
名前が北の肩を弱く叩くと北はまた楽しそうに笑った。隣に居たアランは驚いた様に瞳を見開いていた。
『それじゃあ私そろそろ行くね』
「え?見ないんですか?」
『見るよ?見るけど流石に稲荷崎の応援席には居れないよ。私昨日は烏野の応援席に居たんだから』
「そんな事気にせんと思いますけど」
『私の心の問題だよ』
名前はそう言うと1番後ろへと移動し、コートを見下ろす。すると稲荷崎と対戦チームがコートに姿を表した。
『………頑張れ』
小さく零れた名前の声は周りの歓声に飲み込まれていった。
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