SECOND58


『…あ、やばい。そろそろ駅行かないと…』

「ほんまや。駅まで送ります」

「俺が送るからサムは来んな!」

「って事は俺は行って良いの?」

「あかんに決まっとるやろ!」




そう言うと侑は名前の手を取って席を立った。名前は慌てて片手で財布を取り出すと治が首を振った。



「新幹線間に合わなかったらやばいでしょ?ここは俺らで払っておきます」

『時間まだあるから平気だよ!最低でも自分の分は払わせて!』

「ほんまに大丈夫です。さっさとツム連れてってください」

『…でも、』



渋る名前を角名が宥める。



「……あとで侑に金取るんで。気にしないで行ってください」

『……………でも、』

「今迷ったな!?俺の金ならええんかい!いや!名前の分なら払うけどな!?」

「……名前さん、」

『ん?どうかした?……やっぱり払おうか!?』

「……………いや、なんでもないです。気を付けて帰ってくださいね」




治は名前を呼び止めたが、直ぐに笑みを浮かべて首を振った。そんな治を角名がジッと見つめる。




『…?そっか…?』

「名前行くで〜」




名前は侑に手を引かれ、後ろ髪を引かれながら最後に治と角名に手を振ってファミレスを後にした。





「………」

「………治は本当にあれでいいの?」

「………何がや?」

「苗字さんのこと好きだったんじゃないの?」

「好きやったで」





その言葉とは裏腹にスッキリした顔をしている治に角名は首を傾げる。すると治は少し笑って名前達が出て行った扉に視線を移した。



「俺の初恋やってん」

「…………初恋?」

「中学ん時は名前さんが好きやったで。でもそれは名前さんが言っとった年上に憧れるっていうのに近かったんやろな」

「……まぁ、治がそう言うなら良いけど」

「…それに一途ダサいツムには勝てんやろ」




そう言った治の表情があまりにも優しげで角名は目を見開いた。



「……そっか」



角名はそう言うと立ち上がって治の向かいに移動してメニューに視線を下ろしてつまらなそうにテーブルに肘をついて手のひらに顎を乗せた。それを見て治は楽しそうに笑った。







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