SECOND51
ホテルのお風呂上がりに髪を拭きながらベットに座るとタイミング良くスマホが着信を知らせた。
『…治?』
「はい。今時間大丈夫ですか?」
『うん、大丈夫だけど…、何かあった?』
「宮城に帰んの夕方ですよね?それまで暇ですか?」
『暇だけど…、久しぶりに神戸を観光しようかと思って』
「なら俺が案内します。名前さん1人より安心するでしょ」
『確かに居てくれたら助かるけど…、』
「ツムなら大丈夫ですよ。明日は1日グータラしてるはずやから」
『………別にその心配はしてませんけど』
「嘘つけ」
電話口の向こうで治がクスリと笑う声が聞こえて名前は唇を尖らせた。
「明日10時に神戸駅でええですか?」
『うん!付き合って貰っちゃってごめんね…』
「俺がしたくてしとるんやからええよ」
『……』
治の言葉に侑が以前言っていた言葉を思い出した。双子だとここまで似るものかと名前は苦笑を浮かべた。
『それじゃあ明日楽しみにしてるね』
「あ、あとな、」
『ん?』
「…明日は俺とデートなんでお洒落してきて下さい」
『……え?』
「おやすみなさい」
『あ、うん、おやすみ…、』
名前は呆然としながらスマホをタップして会話を終了させると、ボーッと真っ暗なテレビを眺める。
『………………え?』
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「おはようございます」
『お、おはよう…』
「……緊張してます?」
『しっ、してないけど!?』
「分かりやすすぎやわ」
治はドキマギしている名前を見て笑うとサラリと名前の髪型を崩さない様に優しく撫でる。
『ちょ、ちょちょちょちょ…、』
「ん?」
『きゅ、急にどうしたの…、』
「やっぱ狙うなら傷心中の今かなって」
『ね、狙うって…、』
「俺は土俵に立てなくてもええんですよ」
『……土俵?』
「とりあえずデートスポットでも行きますか」
『え!?』
いつもと違う治に名前は戸惑いながら手を引かれて少し足をもたつかせながらも後に続く。
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「……不審者見っけ」
「不審者ちゃうわ!!…………角名!?」
「本当に治の言う通りだった」
角名が神戸駅に向かうと、喫茶店の看板の後ろにデカい体を隠す様に名前たちを覗き見している侑を見つけた。
「何してんの?」
「………か、買い物」
「看板の後ろで何買うの?」
「…………この看板ええな〜って、この看板欲しいな〜って、」
「………あっそ」
冷や汗を流しながら答える侑に角名は呆れたように見つめた。
「…そんなに心配なら無理矢理にでも告白でもすれば良かったんじゃないの」
「………付き合うてくれって?」
「うん」
「…………俺、全国の時に啖呵切っとんねん」
「啖呵…?」
「名前が手が届かん所まで行くって、そんで悔し泣きさせたるって…、」
「………惚れてる女に言うこと?」
「うっさいわ!!!」
怒鳴る侑に角名は人差し指を自分の唇に当てる。
「バレるよ」
「っ、」
「やっぱり隠れてるんじゃん」
「っ!?カマかけよったな!?」
「いや、聞こえるのは本当だよ。それに急がないと2人行っちゃうけど」
「なにぃ!?」
侑は慌てて2人を追うように足を動かす。その後に角名が続いて妙な絵が出来ていた。
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