SECOND50


「なんや今日の侑、機嫌悪いな」

「…色々あったんだよ」



文化祭が終わり、バレー部が自主練をしていると銀島の言葉に角名が珍しく何処か気まずそうに言葉を返す。



「………」

「…いつまで不機嫌のフリしとんねん」

「…フリとちゃうわ」

「相手はあの名前さんやで。長期戦になるんは覚悟の上やろ」

「……長期戦の覚悟は出来とったわ。けど…、」



侑はボールをグッと両手で握ると苦しそうに顔を歪めた。




「…最初から土俵にすら立てへんのに足掻くのはしんどいねん」

「………」

「……ほんまにあのくそババア」



侑はいじけた様に唇を尖らせると治はフーっと息を吐いた。



「……まぁ、ここまで拗れた責任は俺にもあるわ。……ほんまにちっとやけどな!」

「……はぁ?責任?」

「見せたんや」

「…なにを」

「ベストカップル選手権」

「…………………はァァアア!?」



侑は治に詰め寄って胸元を掴みあげる。



「見せた無いから大事な半日サムにやったんやぞ!!」

「だから悪い言うとるやろ!!」

「いや、言ってなかったよ」

「角名は黙っとれ!お前も同罪やからな!」

「角名もグルか!!」

「………………ちょっとだけ」



侑は青筋を浮かべて奥歯をギリっと鳴らした。けれどその後はパッと治も胸ぐらを離すと視線を逸らした。



「……もう、どうでもええわ」

「……」

「……あほらしいわ、あんな奴もうどうでもええわ」

「…………諦めるんか」

「諦めるも何も、不毛やわ。相手にすらされとらん」

「…………」



ボールをドリブルする侑に治はキュッとシューズを鳴らして1歩近づいた。それに侑は気付いてボールを片手で受け止めて体育館が少し静かになった。



「…名前さんが帰るのは明日の夕方やて」

「だから?もう関係無いいうとるやろ」

「………………なら、俺が名前さんのこと貰ろてええんやな?」

「…………………………は?」




治の言葉に侑はキョトンと目を丸めて、治を見つめる。




「……今冗談にノってやれる程機嫌良くないの分かっとるやろ」

「分かっとる」

「……………」



治の表情は真剣そのもので侑は眉を寄せる。するとまた治の胸ぐらを掴んで引き寄せるが治の表情が崩れることは無くただじっと侑を見つめていた。



「……………」

「……………勝手にせぇや」



治を突き飛ばす様に手を離した侑は床に置いたジャージを拾って体育館を出て行ってしまった。



「………治、また失敗したわけ?」

「…なんの話しや」

「侑を焚き付けるために言ったんじゃないの?」

「なんで俺がそんな事せなあかんねん」

「え…、」



胸元を直す治に角名が近づいて言葉をかけると返ってきたのは予想外の言葉だった。



「……俺はあいつと同じDNAやで。好きな女かて被るやろ」

「………まじか」




角名はいつもの悪ノリを忘れて小さく言葉を零す。治は真っ直ぐと前を向いていて、その表情は覚悟を決めた様な顔つきだった。




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