SECOND48


「………それ、ほんまに言うとんのか?」

『え?本気って、どれが?』

「あかん、あかんて!名前さん、」




止めに入ろうとする治に目もくれず侑は名前に1歩近づいて冷めた目で名前を見下ろす。名前は侑の表情に目を瞬かせた。




『…侑?』

「……ほんまに、何も分かっとらんのか?」

『何の話?』

「……俺がしてきた事、全部無駄やったって事やんか」

『侑?』

「おい、ツム…、名前さんに悪気は…」

「無い方がタチが悪いねん」




冷たく言い放つ侑に治はグッと言葉につまる。




『…あつむ?あの、どうかしたの?』

「………もう、ええわ、あほらしいわ」

「ツム…、」

「お前は結局、俺の事なんも分かってへんやん」




侑は無表情で名前を見下ろしてそう言うと名前は唇を開いて、閉じてを繰り返した。



「……嫌いや、お前のそういう所」

『あ、つむ、』



侑はそう言い放つと背を向けて立ち去ると、治は名前を見ると、目を見開いた




『………』

「……そんな傷付いた顔するなら、何であんな事言うたんですか」

『……』

「あの2人に何も無いこと分かってたんやろ?それに侑が名前さんに本気なんも分かってるでしょう?」

『…………うん、』

「ならなんであんな事言うたんですか。ツムがキレることぐらい分かったでしょう」

『………うん、だから、わざと』




名前は顔を歪めたまま口角を無理矢理だけで痛々しい笑みを浮かべていた。




『……侑を怒らせる為に、言った』

「…なんで、」

『……侑が私なんかを本気で好きになってくれてる事は知ってる。……でもそれが一時の感情じゃないって言える?』

「でもツムは…」

『これから死ぬまでざっと80年近くある。その内のたった数年私の事が好きでも、それは人生の何分の1?若い時は年上が輝いて見えちゃうんだよ。…ほら、初恋は先生だった…、てきな』

「……だとしても、あいつは名前に惚れとります。馬鹿みたいに」

『……侑は真っ直ぐだから。愛情表現も分かりやすいよね、だから浮かれてたんだ』

「浮かれてた?」

『……もしかして私が侑の1番になれるんじゃないかって』




名前の言葉に治と角名は目を見開いた。それと同時に、どうしてこの人はこんなに自分に自信が無いのかと頭に過った。



「…ツムの1番は名前さんですよ」

『今はね』

「苗字さんはどうしたいんですか」

『そんなの簡単だよ』



そう言って名前はさっきとは違って痛々しい笑みでは無く、自然な笑みを浮かべた。けれど発せられた言葉は侑にとっては死刑宣告とも取れる言葉だった。




『…侑には私以外と幸せになって欲しい』




治と角名はその日初めて侑に同情をした。




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