SECOND47
「それでは早速ですが質問行きましょ〜!」
「宮くんと夢川さんは去年も優勝されてますけどお付き合いされて何ヶ月ですか?」
「…付き合うてへんわ!」
「またまた〜!もうみんな気付いてますって〜!」
「夢川さんは読者モデルですからね〜!彼氏の宮くんとしては不安ですよね?モテモテな彼女で〜!イケメンざまぁみろ!」
「ざまぁみろ言うたな!?」
侑のツッコミに会場は盛り上がっていた。けれどその中で名前の心だけがだけが冷め切っていた。
「やから!優勝したら賞金が貰える言うから出とるだけや!」
「私は宮くんと出れて嬉しいですよ」
「惚気頂きました〜!」
「違う言うとるやろ!!さっさと次の組に質問いけや!」
「去年の優勝者には聞くことが沢山あるんですよ〜」
「夢川さんの格好はウエディングドレスですよね?」
「はい、着ることが夢だったのでこんなに早く叶ってくれて嬉しいです。……それに、その相手が宮くんだったことも…、」
「おぉっと〜!?これは早くも優勝決定か〜!?」
夢川と呼ばれている少女は恥ずかしそうに、けれども嬉しそうに頬を緩ませていて、その姿はとても可愛らしかった。
「…今年の優勝者は〜!!!」
「宮侑くん、夢川天絵さんです!」
「正直、予想通りでしたね〜!おめでとうございます!」
時間は過ぎていて、名前がハッとした時には式が終わりに差し掛かっていた。
「では写真を撮らせていただきます!2人は寄ってください!」
「腕とか組んじゃいましょ〜!」
「余計なこと言うなや!!」
「良いじゃない。最後なんだから」
「ヒューヒュー!」
そう言って夢川は侑の腕に自分の腕を絡めて幸せそうに微笑んでいた。
『…………』
その姿があまりにもお似合いで名前は息を飲んだ。
「……あかん、これ失敗したかもしれん」
「…………俺知らないから」
治と角名の言葉が名前には届いておらず、名前はただ教壇で写真を撮られている2人を真っ直ぐに見つめていた。
********
「名前さん、」
『ん?どうかした?』
体育館での出し物が終わり、3人は飲み物を買って人気の少ない体育館裏へと移動していた。
「あの2人は別に何も無いですからね」
「そうそう。侑は部費を稼ぐのにバレー部から駆り出されただけなんで」
『……なんでフォローされてるの?私』
可笑しそうに笑う名前に2人は眉を寄せた。
「……治が見せようなんて言うから」
「角名かて賛成したやろが」
「…2人がずっとやきもきしてるから苗字さんに嫉妬させて、恋心を自覚させるって言うから俺は乗ったんだよ」
「………結果は最悪な方に転がったけどな」
2人のヒソヒソ話に名前は興味が無いのかスマホを取り出していた。
「名前!!」
「うわ、最悪なタイミングや…」
「俺知らないから…」
制服に着替えた侑が現れて治と角名は顔を青ざめさせて1歩後ろに下がって逃げる様に、姿を隠す様に壁に体を寄せる。
「やっと、見つけたわ…、分かりずらい所に居んなや…、」
『走って来なくても良かったのに』
「やって、はよ会いたかったんやもん」
そう言って恥ずかしそうに笑った侑に名前は笑って買っておいた飲み物を侑に渡す。
『あ、私さ行きたいところがあって…』
「ん?何処?」
『治のクラスの出し物見に行きたい』
「は?昨日行ったやん」
『治のクラスは2日目はタピオカ屋さんなんだって』
「ふーん…、まぁええわ。ほな行こ」
『治のクラスだから治に案内してもらおうと思って』
「…え!?名前さん!?」
「……はァ?」
侑は額に青筋を浮かべて治を睨む。睨まれた治は名前を驚いた様に見つめて、治の隣に居る角名は他人事の様に空を見上げていた。
「…………………じゃあ4人でもええわ」
『ううん、治と角名くんと回るよ』
「………」
遂に無言になった侑に名前は気付いて居ないのか言葉を続ける。
『やっぱり2日しかない文化祭を全部私に使うのは勿体無いよ。だからさ、2日目くらいは自分で好きなように、好きな人と回ってよ』
「…………やから、名前と、」
『2日目だし、案内してもらわなくても大丈夫だよ?』
「……ちゃうくて、俺は、」
『高校生最後の文化祭だもんね〜!楽しまないと!』
「……やから、」
『それに侑は彼女居るんだからさ!彼女を放ったらかしなんて良くないよ?そんなんだから続かないんだよ?』
「………は、」
「名前さん、それはあかんやつ…」
「地雷踏み抜いていくスタイル…」
名前は不思議そうに首を傾げて、侑は体から力が抜けたのかダラリと腕をぶら下げて、治と角名は慌てたように顔を歪めていた。
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