SECOND46
「名前さん俺行きたい場所あるんですけど」
『行きたい場所?』
稲荷崎の文化祭2日目、名前が待ち合わせの近くのコンビニに着くや否や治は名前にそう言った。
『そういえば角名くんは?』
「あいつなら学校で合流します」
『そっか』
行きたい場所が決まっている治は真っ直ぐに目的地を目指して歩いている様だった。
「おはようございます」
『あ、角名くんおはよう。今日は混ぜてもらっちゃってごめんね』
「面白いものが見れそうなんで良いです」
『面白いもの…?』
「ほな行きますよ」
そう言うと治と角名は歩き出して名前は慌ててついて行くと、2人は校舎の中には入らずに体育館に足を踏み入れた。
『…体育館?』
「めっちゃおもろいもん見れますよ」
治と角名は体育館の後ろへと移動すると座ることはせず背中に壁を預けて面白そうに頬を緩めて教壇を見つめていた。名前もつられるように治の隣に立って壁に背を預ける。
「お、始まったな」
体育館の明かりが消されて真っ暗になる。突然の事に一瞬、名前の体が強ばった。
「え〜…、それではこれより、稲荷崎ベストカップル選手権を始めたいと思います!!」
「去年の優勝者である2人は今年も出てくれましたね〜!これは手強いですね〜!」
「では1年生から見ていきましょか〜!」
その言葉の後に1年生と思われる男女2人が5組ほど出てくると質問などが行われていた。
『……えっと、これは…?』
「まぁまぁ…、この後面白くなるんで」
「シャッターチャンス逃さないようにしてくださいね」
『えぇ〜…?』
そして少しすると2年生が出てきて1年生と同じように質問を繰り返していた。名前の頭には小さなハテハが浮かんでいた。
「続いては〜!?皆さんが待ち望んでいたこの2人がいる3年生!!去年の優勝者である2人です!!ではどうぞ!!」
すると急に会場がワッと声を上げた。名前は驚いて目を見開いて教壇を見上げると、見なれた顔があった。
『……侑?』
「ブッ…、なんやあいつタキシード着とるやん!七五三か?」
「髪型までしっかりしてるね」
侑はタキシードを身に付けていて髪型もいじられたのかいつもとは違っていた。
「去年の優勝者!宮侑くんと夢川天絵さんです!」
「バレー界でも有名な宮くんと読者モデルの夢川さんのカップルは去年の優勝者ですからね〜」
名前はただ真っ直ぐに教壇を見つめることしか出来なかった。
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