SECOND44
「この後なんか回りたい店あるか?」
『お腹いっぱいだし…、特には無いかな…』
「ならこんままゆっくりしよ」
そう言うと侑はだらりと壁に背中を預けた。
『文化祭回らなくていいの?』
「飯食えたしもうええわ〜」
名前が少し眉を寄せると侑は名前の頬を摘む。
「そんな顔せんでもほんまにもうええねん。別に名前が居るから回らへんとかやないで」
『……』
「たまにしか会えんのやから話しようや」
『……文化祭、回ろうよ』
「えぇ〜…」
名前の言葉に侑は心から面倒臭そうにブー垂れる様に唇を尖らせて眉を寄せて動く気が無いのか壁に背中を預けてズリズリと体を下にずらす。
「俺は名前と2人がええねんけど…」
『でも最後の文化祭だし…』
「…………」
侑は何かを閃いたように少し目を見開いてニヤリと悪戯を思いついた時の様に笑って名前の顔を覗き込んだ。
「名前が手を繋がせてくれたら回ろかな〜」
『え?』
「あ〜、最後の文化祭やしな〜、楽しみたいな〜」
『っ、』
「でも名前が手繋いでくれんからな〜、繋いでくれたら文化祭回るんやけどな〜」
名前は自分の羞恥心と侑にとって最後の文化祭を天秤にかけて、諦めたように項垂れると渋々といった感じでゆっくりと手を差し出した。
『………文化祭、回ろう、』
「よっしゃ!」
侑は声を弾ませながら立ち上がると名前の手を取って校舎に向かって歩き出した。
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