SECOND42
『………懐かしすぎてお姉さん涙出そう』
「たったの数年前やろ」
校内に入ると中は綺麗に彩られ、名前は母校である烏野の文化祭を思い出した。
「お、クレープあったで」
『本当だ!』
自分の学校である侑は慣れたようにクラスに足を運んだ。名前は未だにキョロキョロと視線を泳がせていると後頭部に手が回されて視線を下にさげられる。
「キョロキョロすんなや。どれにするん?」
『えっと…、あ、いちごチョコがいい』
「ん、いちごチョコ1つとツナレタス1つずつな」
「かしこまりました〜!」
出来るまで待っているのに少し横にズレると侑はパンフレットを開いた。名前が覗き込むと侑は片手でパンフレットを持って、名前の腰に手を回して少し抱き寄せる。
『……え、』
「次は何処行きたい?」
『えっ、えっと、…え?』
突然の行動に名前は混乱して、腰に回されている侑の手に意識がいってしまい上手く言葉が繋がらない。服越しに感じる侑の手のひらの温かさに名前は頬を赤らめる。
『あ、あつむ、』
「お待たせしました〜!いちごチョコとツナレタスです!」
「おぉ、おおきに」
侑はパンフレットを閉まって2つ受け取ると、廊下に出て壁に寄って名前に1つ渡す。
『あ、ありがとう…、ってお金!』
「タダやから」
『タダ!?なんで!?』
「今の後輩やねん」
『職権乱用!?』
「ちゃうわ!昨日奢ってやったからこれはタダやねん!」
そう言うと侑はクレープにかぶりついた。名前もクレープを口に含み、咀嚼する。すると侑の視線を感じて顔を上げる。
『ん?どうかした?』
「……1口欲しい」
『じゃあそっちのクレープと交換する?』
「…ちゃうわ」
『…え?』
侑はそう言うとクレープを持っている名前の手を包み込んで自分の方へと引き寄せる。そのまま名前のクレープを食べるとチラリ名前と視線を合わせる。
「甘っ!」
『……』
「俺の食う?」
『た、食べない…』
名前は不自然に見えないように視線を下げてクレープをたべる。すると侑は中腰になって名前の顔を覗き込む。そしてニヤリと笑う。
「間接キスやんな」
『……キスした人が何言ってんの』
「その割に顔赤いで?」
『……唐揚げ侑の奢りね』
仕返しのつもりで名前がそう言うと侑は嬉しそうに笑って名前の頭に手を置いた。
「元からそのつもりやし」
『お金無いとか言ってたのに…』
「あれはサムがサーブ下手くそやからや!」
そんな会話をしながら2人はまた歩き出した。
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