SECOND38


名前がスケジュール帳を開きながら侑に電話をかけると、呼出音が切れたのに侑からはなんの返答もなく名前は何度目かの侑の名前を呼んだ。




『おーい?侑?聞こえる?電波悪い?』

「……」

『……侑〜?おーい?』

「………あ、名前さんですか?」

『あれ?治?私かけるの間違えた?』





侑にかけたはずのスマホからは治の声がして名前が画面を確認すると画面には、宮侑と名前が出ていて、スマホの向こうからも「間違ごうて無いです」と声が聞こえて名前は余計に首を傾げた。



「なんかツムがスマホ持って固まっとったんで代わりに出ました」

『え、なんで固まってんの?』

「名前さんから電話来たのが嬉しかったんとちゃいます?」

『いやいや、そんな事は無いでしょ。中学生の初めての電話じゃないんだから』

「あんまりツムの拗らせ方舐めへん方がええですよ」

『えぇ〜?』



名前が少し笑いを含んでそう言うと「ツムになんか用でした?」と促した。



『あ、うん。文化祭についてなんだけど…』

「来れそうですか?」

「………はっ!」

「あ、動いた」

「それ俺のスマホや!返せ!!」

「俺が代わりに出てやったんやろが!」

「それは名前から俺へのラブコールや!!」

「なにがラブコールやねん!きしょいわ!!」

『ラブコールじゃないし!!』




突然聞こえた単語に名前は少し頬を染めて慌てて否定するとスマホの向こうでガタガタと物音がしたと思ったら侑の声が聞こえた。




「なっ、なんか用やった!?」

『あ、えっと、文化祭について…』

「来れるんか!?」

『う、うん…、』




名前がそう言うと侑の声のトーンは分かりやすく高くなり、楽しそうになった。



「俺午前中は店番やねん!やから午後来てや。そんで一緒に回ろ!」

『私からしたら一緒に居てくれた方が安心するけど…、でも侑は他に回りたい子とか居ないの?』

「俺は名前と回りたいねん!」




即答でハッキリと楽しそうに答える侑に名前は一瞬呼吸が止まるが、慌てて言葉を続けた。




『ふ、2日目も行けそうなんだけど…、』

「2日目!?ふ、ふつかめは、……角名…、いやあいつはあかん!……サム…、サムでええわ!サムと回っとって!!」

『…へ?』




名前は2日目も侑が一緒に居てくれるものだと思っていた為、驚いた様な声が出てしまい、慌てて声を出す。




『う、うん!分かった!』

「サムにも言うとくわ!!」

『あ、ありがとう!』

「おん!神戸着いたら連絡してや!迎え行く!」

『わ、分かった!』

「じゃあな!」

『ま、またね!』





名前は急ぐように通話を終了する。そして項垂れる。




『………恥ずかしい』



侑が当たり前のように自分の隣に居てくれると思っていた事が自意識過剰に感じて名前は顔を赤らめる。



『…侑だって友達と回りたいって…、どんだけ自意識過剰なの自分…、』




名前はまた項垂れて溜息を吐き出した。




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