SECOND30


『わぁ!水族館とか何年ぶりだろう!』

「俺も小学生の時の遠足以来やな…」

『私シロクマ!シロクマ見たい!』

「なんでそこのチョイスなん?…いやまぁ、はしゃいどるの可愛ええけど」




グイグイと手を引く名前に侑は呆れた様な笑みを浮かべながら楽しそうに足取りを進めた。



『シロクマって侑みたいじゃない?』

「はァ?どこがや」

『え?適当。別に本当に似てると思ってるわけじゃないし』

「なんやねん!」



軽口を叩きながら水族館を回り、色々な動物や魚と触れ合っていく。



「イルカショーやっとるで」

『え、濡れるからやだ』

「……まぁ、名前はそう言うと思ったわ」

『今イルカショーやってるならお土産屋さん空いてそう!』




そう言って足早にお土産屋を目指す名前に引っ張られるように侑も足を進める。



『うわ!トビウオのキーホルダーあるよ!』

「…この水族館センス大丈夫か?」

『影山くんに買って行ってあげよ』

「しかも男へのプレゼントかい!」




そんな侑を気にした様子の無い名前はお菓子を買う為に侑と手を離し会計をして侑の元に戻ると侑が居らず辺りをキョロキョロと見渡す。



「なにキョロキョロしとんねん」

『いたっ、』



頭に小さな痛みを感じて振り返ると、侑が手のひらを胸元辺りに上げていて手刀を落とされたのだと気付く。


『もう少しで迷子センター行くところだったよ』

「まずはスマホ使えや」



侑はそう言ってまた当たり前のように名前の手を取ると、歩き出した。



「荷物はコインロッカー預けて、もうちっと回ろうや。俺行きたいエリアあんねん」

『え?うん、良いけど…』




場所が分かっているのかパンフレットを見ること無く足を進める侑に名前は手を引かれてついて行く。




『……クラゲエリア?』

「おん。めっちゃ綺麗やろ?ネットでも好評やってん」

『……綺麗』




辺りは薄暗くなっていてクラゲがライトアップで綺麗に彩られていた。




『クラゲ可愛い…』




名前が優しくガラスに触れ、小さく零すと侑も小さく「せやな」とガラスをちょんちょんと啄いた。



「……なぁ、写真撮りたいんやけど」

『え?写真撮影OKって出てなかった?フラッシュ切れば撮っても大丈夫だと思うよ?』

「クラゲや無くて、俺と名前の写真」

『ん?』




侑はポケットからスマホを取り出して起動すると、手を解き名前の肩を抱いて近寄せた。



「ここなら薄暗いから撮って待ち受けにしてもええ?」

『……まだ諦めて無かったの』

「おん」

『……薄暗いしパッと見じゃ分からないだろうから良いよ』

「よっしゃ!」



侑は小さく喜ぶとカメラを内側にして顔を寄せた。




『ち、近くない?』

「近ないわ。…撮るで」




静かなのを気遣ってなのか、無音で撮ると侑は画像を確認し嬉しそうに頬を緩ませた。



「後で送るわ」

『うん、ありがとう、』


侑はスマホを操作し、待ち受けにすると満足そうにポケットに仕舞ってまた手を繋いだ。



「遅なったけど昼飯でも食いに行くか?ここの水族館レストランあるんやて」

『うん、行こう』



侑はまた慣れたようにレストランを目指し、足を進めた





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