SECOND28
「とりあえず定番の所から回って行くか」
『あ、私1箇所行きたい場所があるの!』
「ん?どこ?」
『侑と治が行ってたバレー教室行ってみたい!』
「は?バレー教室?」
侑は不思議に首を傾げると名前は繋がれた手を少し引いて先を歩いた。
『どこら辺にあるの?ここからじゃ遠い?』
「遠くは無いけど…、」
『チラッと見るだけでいいの!お願い!』
「……しゃーないなぁ、」
侑は繋いでいない手で頭を掻くと案内するように手を引いた。
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「おぉ!侑やん!久しぶりやな!」
「今日練習日やったんやな」
「はぁ?知ってて来たんとちゃうんか?……というかそっちの子は……、侑も隅に置けへんなぁ〜!」
「うっさいわ!」
ちょうど練習日だったバレー教室は小学生達で賑わっていた。侑と名前が体育館に足を踏み入れると子供達は2人に気付き行儀よく挨拶をした。
『初めまして、侑と治の知り合いの苗字です!』
「ん?侑の彼女とちゃうんか?」
『え?いや、ちが、』
「俺が落としてるところや」
『侑!?』
「侑でも落とせへん女の子も居るんやな〜!」
サラリと答える侑の顔を見上げると侑は監督を真っ直ぐに見ていた。
「ちっと見学してってもええ?」
「見学すんなら手本見せたってや」
「シューズ無いねん」
「軽くでええわ」
侑は面倒臭そうに顔を歪めると、「…ほんまにちっとやからな」と言いながらコートの中に入って行った。
「彼女さんはバレー経験者なん?」
『あ、はい。学生の時に少しだけ…』
名前が腰を下ろしたベンチの隣に監督が腰を下ろし、優しげな笑みを浮かべて名前に話しかけた。
「侑はほんまに凄い子やな」
『……はい、本当に』
名前は子供達に教える侑を見つめ、返事をする。
「今日はなんでここに?」
『私が見たいって言ったんです』
「へぇ〜、珍しいなぁ」
『…少し、彼の見てきた風景を見たいなって』
名前が侑を見つめたまま目を細めて微笑むと監督は大きく口を開いて豪快に笑った。
「ロマンチックやな〜!」
『お、お恥ずかしいです…、』
「ええんとちゃう?おっちゃんは可愛ええと思うで!」
名前が恥ずかしくなり身を縮こませると、そんな名前の背中を監督がバシバシと何度も叩く。
「もっと図太く生きた方がええで〜!やないと侑となんか付き合ってられんやろ〜!」
『いや、あの私、侑と付き合ってる訳じゃ…、』
「あ〜!あつむの女がかんとくにせくはら≠ウれとる!!」
『へっ!?』
「ちゃっ、ちゃうで!?」
「おいゴラァ!ジジイ!!何しとん!!!」
「ちゃうって!!」
休憩していた男の子が名前たちを指差し大声でそう言うと侑はすぐさま名前の腕を引いて腕の中に閉じ込める。
「侑ちゃうからな!?ただの世間話や!」
「俺かてまだ名前にえっちな事聞いとらんのやぞ!ふざけんなや!!」
『はァ!?な、何言ってんの!?子供たちの前で!!』
「こんなエロじじいの傍に居ったら名前が襲われてまう!もう行くで!!」
侑はそう言って名前の手を引いて体育館を出た。出る時に子供たちは「また来てや〜」と言ってくれて慌てて手を振り返して、落ち込んでいる監督には会釈をして名前は侑に手を引かれ出て行った。
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