SECOND24


「……名前、」

『…侑?どうかした?』




昼休憩が残り10分程になった頃、名前がスクイズを準備していると後ろから名前を呼ばれて振り返ると侑が立っていた。



『……侑』




名前は侑を手招きで隣に呼ぶと、自分の手を濡らした。



『ちょっと屈んで』

「ん?」



言われた通り侑が中腰になると名前は濡れた手で侑の髪を撫でた。突然の行動に侑はピシリと固まる。



『寝癖、汗かいたけど直らなかったね』

「……は、」




名前は可笑しそうに笑い、髪を撫で付ける。そして侑の後頭部の刈り上げられてる部分を少し撫でる。



『…おぉ、意外と気持ちいい』



そのまま後頭部に手を回して何度か撫でる。すると侑がプルプルと震えだして手を止める。




『侑?』

「……た………い、」

『え?』




名前が聞くために顔を覗き込むと侑はバッと顔を上げたが、その顔が真っ赤に染まっていて名前は目を見開いた。




「この変態!!スケベ!!」

『…えぇ!?』

「エロく触りおって!!」

『はぁ!?』



侑はそう叫ぶと一目散に体育館の中へと入って行ってしまった




『……どういう事なの…?』

「あー、また苗字さんが侑のこと誑かしたー」

『……角名くん見てたの?しかも棒読みすぎ』



後ろの入口からひょっこりと顔だけを出した角名がパシャリと名前を撮り、隣に移動する。



『……その写真どうするの?』

「侑に売ります」

『…買わないでしょ』

「意外と良い値で売れるんですよ」

『既に売ってた!?』




角名は水道に腰を預けるとスマホをいじりながら口を開いた。



「苗字さんって侑と付き合う気あるんですか?」

『……急だね』

「で、どうなんですか?」

『……………無いよ』

「へぇー」



角名はスマホを見つめたまま相槌をする。名前はスクイズの蓋を開けて粉を入れる。




「何でですか?」

『……侑は高校生だよ』

「でもあと1年で卒業ですよ」

『未成年なのは変わらない』

「未成年でも合意があれば問題無いでしょ」

『………大人として、許されない気がする』

「意外と苗字さんて面倒臭いですよね」

『はぁ!?』





名前は眉を寄せて角名を睨むけれど、本人は気にした様子は無くスマホをいじっていた。



「面倒臭いし、侑以上のヘタレですよね」

『……はァ?』

「色んな御託並べてますけど結局は侑と付き合うのが怖いだけでしょ」

『……』

「侑は顔は良いから人気もあるし、本当にプロになるかもしれない。そんな侑の将来を潰すんじゃないかって怖いんですよね苗字さんは」

『……そんな事、無いけど』

「ほら、嘘が下手」

『……生意気』

「意外と人間観察好きなんで」

『怖すぎ…』




角名はスマホから目を離すと名前の頭に手を置いて何度かポンポンと叩いた。




『………は、』

「侑は侑だし、侑は単純なんで大丈夫ですよ」

『…生意気なクソガキ』

「俺こう見えて妹いるんで」

『私歳上なんだけど…』




角名はクスリと笑って手を離すと、真っ直ぐに名前を見た。



「…でも苗字が本当に本気で侑と付き合う気が無いなら思わせぶりな事はしない方がいいですよ」

『え?』

「それは優しさでも何でもないですから。可能性が無いのに相手に希望を持たせるのはただの偽善で相手を傷つけることになりますよ」



角名はそう言うともう一度名前の頭を撫でて体育館に消えて行った






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