SECONDQ
『いずれプロになるかもな〜とは思ってたけど本当になっちゃいそうだね〜』
「当たり前やろ!」
名前は部員達が食べ終わった食器を洗いながら、隣で皿拭きをする侑に声をかける。
「そんな将来日本代表の俺が手伝ってるんやから感謝せぇよ〜」
『ありがたき幸せ〜』
「適当すぎやろ」
名前の返事に侑は弱い力で名前の頭を小突くとまた皿を取って拭いた。
『いやぁ〜、将来の日本代表が近くにいるなんてねぇ。今度色紙持ってくるからサイン書いてよ。漢字で』
「はぁ?なんで漢字?」
『だって本当に日本代表になったらかっこいい英語とかのサイン覚えちゃうでしょ?漢字の方がプレミア付きそう』
「売る気満々やんか」
『えへへ〜』
「それにサインなんていつでも書いてやるし」
『いやいや、日本代表になったら忙しくなるでしょ?会えないよ』
「は?」
『それに今みたいにずっと一緒に居れる訳じゃないしさ〜、だから今のうちに…、うゎぁっ!』
名前は食器を洗いながら言葉を続けていると突然片手を強く引かれて驚いて侑を見ると、侑は眉を寄せ不機嫌を露わにしていた。
『侑…?』
「…一緒に居れへんってどういうことや」
『え?…だ、だって、私だってもうすぐ就職するし…、侑はプロになったら、会えないでしょ?』
「……名前はほんまにそれでええんか?」
『い、良いも悪いも、仕方ないでしょ…?』
低く言葉を続ける侑に名前は少し恐怖を感じながらも返事をすると、侑に掴まれている手のひらから泡が落ちて侑の手にかかりそうになる。
『あ、侑…、泡付いちゃうから、離して、』
「……」
『あつ、』
名前が侑を呼ぼうとした瞬間、唇に柔らかく温かいものが触れて目を見開くと侑の顔が近くてぼやけて見えた。
「…………謝らんからな」
『……………』
侑は唇を離すとそう言って、また濡れたお皿を拭き始めた。それにつられるように名前も皿洗いを再開した。
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