SECONDO
『今日って練習試合なんですね』
「あっ、言うの忘れとったな。練習試合やで」
『……はい、相手校来てるので知ってます』
名前は内心、黒須監督も適当だよな、と感じながら、ユニフォームに着替える選手達を見守る。
「……苗字さんが俺をヤラシイ目で見てる」
『知ってたけど角名くんって意外とノリイイデスヨネ…』
「俺はヤラシイ目で見てもええでぇ〜」
『見ないから』
上半身を脱いだまま近づく侑にストップをかけて早く着替える様に促すと侑は素直に従いユニフォームに身を包んだ。
「どうや!?かっこええやろ!」
『……全国で見てるんだけどね?』
「俺は前の俺を超えるかっこよさやねん…」
「何浸っとんねん。きしょいわ」
治は着替えるとバナナを取り出して食べ始めた。
『あっ!もうすぐ試合なのに食べないで!』
「食った方が力出るんで」
『……体重くてジャンプ出来なくても知らないから』
名前はジト目で治を睨むけれど、当の本人である治は気にした様子もなくバナナをむしゃむしゃと食べる。
「試合を開始します。整列をお願いします」
審判をしてくれる相手校のコーチの声にぞろぞろと部員達が移動する中、侑は名前の右手を握る。
『……侑?整列しないと…、』
すると侑は真剣な視線で名前を見つめるが、その表情は自信に満ち溢れていた。
「……ちゃんと見とれよ俺の事。絶対に惚れさせたる」
『……………は、』
そう言って侑は手を離してコートの中へと足を進めた。
『…………あ〜…、もう…、』
名前は顔を隠すように両手で覆い、必死に心臓の高鳴りを抑え込むことに集中した。
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