SECONDN
『……』
「……」
「……」
「……オッホホ、」
名前、侑、治の沈黙に何が面白かったのか角名が笑うと名前が角名を睨む。それにまた角名が笑うと名前は舌打ちをした。
「……なんでそんなに角名と仲良くなっとん」
『……え?仲良い?今のが?私キレてたよね?』
「そういう場所も見せられるくらいには仲良くなったじゃないですか」
「角名は確実に面白がっとんな」
「……名前」
『なに?』
「……角名がタイプなん?」
『…え?』
「え?まじですか?俺が好きなんですか?」
「どうなん?」
『……人間としては好きだよ』
「つまんない答えですね」
「……」
『侑?どうしたの?』
「ごちそうさんでした」
「ごちそさまでした」
『え、え?』
治と角名は食べ終わるや否や席を立ち、片付けて去って行ってしまった。周りもぞろぞろと食べ終わり、食堂に残っている人は数人となってしまった。
『……侑?』
「……」
名前の左隣に座っている侑は箸を持っていない名前の左手を握った。
「……」
『侑?』
「……」
何も言わず、視線を下げている侑に名前は天井を見上げ、そして周りを見ると部員たちは居なくなっていてこの後の洗い物を考えると億劫になったが今は好都合だった。名前はコトリと箸を置いて侑と向き合う。
『……今日だけ特別に名前お姉様が抱きしめてあげよう』
「……は?」
『私がそうだったんだけど、辛い時って誰かに抱きしめて欲しくならない?仕事が辛すぎた時とか、勉強が辛すぎた時とか、………疲れちゃった時とか』
「……別に、疲れとらんし」
侑はそう言いながら恐る恐る、ゆっくりとした動作で名前の背中に腕を回す。
『侑は頑張ってるよ。セッターをやって、強豪でスタメンを維持し続けて、主将までやって』
「……普通やし」
『普通じゃないよ。凄い事だよ。私なんかじゃ絶対に出来ない』
「…まぁ、名前は無理やろな」
『だから、侑は凄い』
「………」
名前は侑の背中をポンポンとゆっくりとしたリズムで叩く。
「……なんか、名前の前やとかっこつかへんなあ」
『かっこいいよ。侑は凄く』
「…ダサいところばっかり見せとる」
『いいじゃん。ずっとかっこいい人なんて居ないよ。誰だって弱い所もあるし、ダサいところだってある』
「………ほんま、敵わんわ」
『お疲れ様、侑キャプテン』
「……おん」
名前が抱きしめながら頭を撫でると侑は擽ったそうに身を捩った。けれど離れる気は無いのか腕に力が込められる。
侑からは不機嫌さは無くなっていた。
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