SECONDK
『……えっと、角名くん、ごめんね』
「何がですか?」
『荷物持ち、させちゃって…』
「練習抜けられたんで別に良いです」
『…そっか』
名前はスーパーに向かう間、角名との距離の取り方に困っていた。
『…その、えっと、』
「……苗字さん」
『はい!?』
突然、角名に名前を呼ばれ慌てて返事をすると角名の細い目に見つめられる。
「侑と付き合ってるんですか?」
『え?いや、付き合って、無いけど…』
「…へぇ〜」
角名はそう返事をするとスっと目を細めた。
「…全国の前辺り、侑の機嫌が最悪な時があったんです」
『まぁ、あの性格だしね…』
「そんで全国が終わったと思ったら急に機嫌が良くなるし」
『…へ、へぇ〜』
「それに去年の10月頃に侑と治が大喧嘩したんですよ。そこに苗字さんの名前も出てきたんです」
『…へ?』
「治が苗字さんに似た女ばっかりを取っかえ引っ変えしてよって、ってキレてました」
『…お、おう?』
なんて答えていいのか分からず名前が首を傾げると角名は立ち止まり、鋭い目付きで名前を見る。
「…侑の機嫌に波があるのは分かってますけど、それに左右されたくないんですよね」
『……』
「…侑とさっさと付き合って貰えません?」
『………えっ!?そっち!?』
名前は侑に関わるなと言われるのかと思って身構えて居たが、角名にさっさと付き合えと真逆のセリフを言われ名前は体から力が抜ける。
「苗字さんが離れて行った方が侑の機嫌が悪くなるのは分かってるんで」
『……ぷっ、』
「…はァ?」
名前が吹き出すと角名は珍しく眉を寄せ苛立った表情を浮かべる。それを見て名前は慌てて否定する。
『馬鹿にしたとかじゃ無いから!』
「じゃあ、なんですか」
『…あの双子の周りにこんな良い子が居てくれて良かったと思って』
「意味が分からないんですけど」
『…角名くんってちょっと月島くんに似てるよね』
「……もういいです」
『あっ、ちょっと待って!』
角名は名前を置いて行くように歩き出し、慌てて名前が追いかける。
『侑の事心配してくれたんだよね?』
「……機嫌が悪い侑が面倒なだけです」
『ふふっ、』
「……俺、苗字さん、苦手です」
『えぇ〜?』
「ニヤニヤしないで貰えます?」
『角名くんは本当に面倒でどうでもいい相手は無視するか適当に対応するだけでしょ?』
角名は図星を突かれたのか、グッと顔を歪ませる。それを見て名前が微笑む。
『…これからもあの双子の事、よろしくね』
「………苗字さん」
『なぁに?』
角名は立ち止まり、真剣な表情で名前を見つめ、自然と名前の体にも力が入る。
「目的地のスーパー通り過ぎてます」
『言うの遅くない!?』
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