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家に帰って化粧も落とさず、お風呂にも入らずにベッドにダイブしてうつ伏せで枕に頬を当てて横を向く。



『……』



私はどんなに仕事で疲れていても、どんなに帰りが遅くなっても化粧を落としてお風呂に入ってからベッドに入ると決めていたのに、今日はどうしてもそれをする気になれなくてただただ脱力する。




『……私、こんなに女々しかったっけ?』




ただの高校生と関わりが無くなるからってこんなに脱力するなんて、自分でも思っていなかった。



『……』





瞼を閉じると涙を浮かべたあの子達が浮かんできて、慌てて瞳を開く。



『………怒る、かな、』




何も言わずに帰ってきた私をあの2人は怒るだろうか。試合を見ても感想も何も言わずに帰った私を叱ってくれるだろうか、会いに来てくれるだろうか。



『……なに期待してんだ。バカ』




枕に顔を埋めるとファンデーションの香りがして眉を寄せる。けれど体を起こす気にはなれなくてボーッと部屋の中を見つめる。



「………あれ?名前〜?」

「部屋真っ暗やん」

『ーっ、』




いつもの癖で家の鍵を閉めるのを忘れていた。2人はチャイムなんて鳴らさず部屋に入ってくる事を忘れていた。……いや、それが当たり前になっていた。



『っ…、』



私は慌てて上体を起こしてバタバタと走ってリビングの扉を閉める。



「……え、」

「名前さん?」




扉の前から2人の戸惑う声が聞こえてギュッと唇を噛む。



大丈夫、まだ2人と顔は合わせていない。

2人とは会った事にはならない。





「名前?どうしたん?」

「体調でも悪いんですか?」

『……』




唇が震えて、はっ、と息が漏れる。


言わなければならない。もう2人とは会わないと。ちゃんと、伝えなければ



『……ぁ、』

「……名前?ほんまにどうしたん?」

「とりあえずここ開けてもらえませんか?」

『……ご、めん、』




私が小さく謝ると2人から戸惑いの声が聞こえた。



「…なにが?…何も言わずに帰った事なら、ええよ、怒っとらん、」

「やから、ここ開けてください、ちゃんと、話しましょう」

『…ごめん、』




2人が本気になればこんな扉簡単に開けることができるのに2人はそれをしない。2人は何があっても私が本気で嫌がる事は絶対にしないから。



『……』



けど、私は最低だから。心の何処かで無理矢理にでもここを開けて私を抱きして欲しいなんて考えてる。




『……わたし、最低だ、』

「なんで、…なんでそうなんねん、」

「名前さんは最低やないやろ、なぁ、名前さん、開けて、頼むから…、」





こんなにも優しい子達を私が縛り続けていい筈が無かった。なのに私は甘えて、縛り付けて、自分勝手に、2人の好意に答えられるわけでもないのに。




十分、いい思いをした。なのにこれ以上なにを望むの?






『……侑くん、治くん』

「…なに?」

「…なんですか?」









『…もう、ここには来ないで』





私からちゃんと、2人を解放してあげないと




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