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『…わたし、は、ふたりと、』



この手に縋ってしまいたい。この温もりを手離したくない。でも、これが愛情なのか、親愛なのか、分からない。



ギュッと瞳を閉じると涙がまた流れた。そして、女の子達のあの悲しい表情が瞼の裏に焼き付いて離れない。



『っー、』




心臓が痛い。手が震える。どうしたらいいのかが分からない。離れなくちゃいけない。でも離れたくない。



『…わたし、どうしたらっ、いいのっ、助けてっ、』



大の大人がみっともない。高校生の前でボロボロと泣いて、助けて欲しいと縋って。


もういっそのこと、こんなみっともない最低な私を見限って欲しい。嫌って欲しい。そうしたら私はきっと、2人から離れられる。




『……侑くん、治くん、』




なのに2人は優しく私の手を握る。2人の手が温かくて自分の手の先が冷たかった事に気付いた。2人の熱が移ってじんわりと指先が温かくなる。



「ほんまに名前はアホやなぁ」

「言うのが遅いですよ」

『っ、なんでっ、なんで私に、優しくするのっ、も、やめてよっ、』

「なんで優しくするかなんて小学生のガキンチョでも分かるで」

「いや、赤ん坊でも分かるわ」





2人はふわりと笑って口を揃えて言った。



「「そんなん、好きやからに決まっとる」」




私は驚いて目を見開くと2人はプッと吹き出した。


「何驚いた顔しとんねん」

「最初から言うとったことですよ」

『……私は、2人に好かれるような、』

「はい、スト〜ップ」

「それは名前さんが決める事や無いでしょ」

『…でも、私は、』




それでも私が食い下がると2人はそれぞれ溜息を吐き出した。そして肩を竦ませて呆れた様に、けれど優しく微笑んだ。


「もう1番簡単な方法教えたる」

「本当なら名前さんから言われたいけどな」




2人は私の涙を親指で拭うと、優しく目元を緩ませて優しく言った。



「「俺らを好きになったらええやん」」

『…………え、』

「名前が俺らを好きになればぜーんぶまるっと収まる!」

「んで俺らは名前さんと居れる。簡単な事や」

『そ、んな簡単な話じゃっ、』

「これ以上簡単な事なんてあらへん!」

「勉強より簡単や」

「好き同士は一緒に居ったらええねん!」

「好き同士に文句言う奴が居ったらそいつが邪魔なだけや」

「俺らは名前が好き」

「そんで名前さんも俺らが好き」

「ほら!全部解決や!!」





胸を張って答える2人に私は呆然と立ち尽くすしか出来なかった。




『…………好きだから、一緒に居る』

「おん。それが当たり前やろ?」

「なんもおかしい事無いわ」

『………私は、2人の事が好きなのか、分からない』




私がそう言うと2人は揃えて眉を寄せ、はァ!?と声を荒らげた。



「ここまで来てそれを言うか!?普通!」

「俺らとは居れへんでこんなに泣いとるのに好きなや無いとかないやろ!」

『……でも、2人とずっと一緒に居たい』

「……」

「……」




私が正直に伝えると2人は唇を尖らせながら口を閉ざした。



「……まぁ、今はそれでもええわ」

「でも絶対に俺らの事好きやって言わせます」

「俺は優しいからな。アホな名前に付き合ったるわ」

「ツムより俺の方が優しいやろ」

「はァ!?んなわけ無いやろ!」

「人のプリン食う様な奴は優しいとは言わへん」

「いつの話しとんねん!ちっさい男やな!」

「はァ!?人の食うたツムが悪いんやろが!」

『………ふっ、』

「あ、名前が俺のおかげで笑ろた」

「俺のおかげやろ」

『……侑くん、治くん』

「ん?」

「なんです?」



私が呼ぶとすぐに振り向いてくれる2人に心臓がギュッと苦しくなった。けれどさっきみたいな息苦しさは無かった。



『……2人ともありがとう、大好きだよ』




この好きは2人と同じものかは、まだ、分からない。でも、それでも応えていきたい。



「……俺も大好きや」

「俺も、大好きです」




久しぶりに包まれた2人の温もりに縋るように背中に回した腕に力を込めると、2人も応える様にギュッと力を込めた。それがたまらなく嬉しくてまた涙が溢れた。




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