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「……名前、誰や、そいつ」
「えっと、苗字さんの弟さん?ですか?」
『…あの、えっと、』
「…名前さん」
久しぶりに会った…、会ってしまった侑くんと治くんの声は低くて恐怖を感じてしまう。声からも雰囲気からも2人が怒っている事が分かる。
「……こんな時間に男と会っとったん?」
「俺らには、顔すら見せてくれんのに」
「俺は苗字さんの仕事場の後輩で…」
「お前に聞いとらん」
『っ、年上にその言い方は無いんじゃない?』
「……あ゛?」
「…名前さんが偉そうに言える事ですか?」
『っー、』
2人の冷たい視線にグッと息が詰まる。私が1歩下がると、2人は私に近寄って治くんが私の腕を引っ張り腕の中に閉じ込める。
『っ、ちょっと、』
「気付いとると思いますけど、俺キレてます」
『っ、』
腕にグッと力が込められて体に力が入る。侑くんは私達と後輩の間に立って、まるで私を隠す様に背中を向ける。
「…もう帰ってもろてええですよ。名前の事は後は俺らが面倒見るんで」
「でも、君たち高校生だよね?こんな時間に外を出歩くのは…」
「…俺あんまり機嫌良く無いんやわ。さっさと帰ってくれへん?」
『あつむくっ、』
言い方にあまりにも棘があって慌てて注意しようと治くんの胸板を押そうとした時、後頭部に回っていた手に力が入れられて頭が治くんの体に押し付けられる。
「俺らこれから名前と話し合わんとあかんねん」
「苗字さんは、あんまり話したくなさそうだけど?」
「………お前が名前の事を語んなや」
「俺らの問題に口出さんといてください」
「……苗字さん、」
不意に後輩に名前を呼ばれてビクリと体が揺れる。それを感じ取った治くんは私を振り替えさせる気が無いのかグッと手に力を込めた。
『…………大丈夫、ここまで送ってくれて、ありがとう』
「…………はい、それじゃあまた月曜日に」
『…うん、ごめんね』
「そんなに謝らないで下さい。俺が言ったことの返事に聞こえるので」
「………さっさと帰れや」
「……苗字さんに酷い事しないでね」
「……あァ゛?」
侑くんが帰れと言って、後輩の言葉に治くんが低く唸ると、後輩は小さく息を吐いて階段を降りて行った。
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