08
『……あれ?宮さん?』
俺が1人で本屋に行く為にショッピングモールを歩いていると先の方に宮さんが居た。声をかけようと1歩踏み出した時、ピタリと足を止めた。
『………』
宮さんの隣には女の人が居て、宮さんは少しだけ笑ってた。
『……彼女、居たんじゃん』
自分から出た声に棘があって、俺は自虐的にフッと笑った。
『…なに、キレてんだよ』
俺は本屋とは逆に足を進めて宮さんに背中を向けてショッピングモールを出た。
『……』
宮さんはノンケで、優しいから俺と一緒に居てくれただけ。なのに俺はなんでキレてんだよ。本当に自分が嫌になる。
もしかしたらあの女の人は彼女じゃないかもしれない。けれどそんなの関係無い。あれが本来あるべき恋人の姿なのだから。
俺みたいな高校生で、子供で、…………男で、
そんな奴と居る方がおかしかった。今までがおかしかっただけ。
宮さんが優しいから、それに甘えてただけ。きっと本当は迷惑してた。俺が家に行くのも、泊まるのも。
あの人は誰にだって優しい、放っておけない。
俺みたいな奴とは、正反対の、優しい人、
『……タイプじゃ、無かったのにな、』
その時の俺の声は酷く震えていた
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