02
『…本当におにぎり屋だったんだ』
「なんで嘘つくねん」
『本当は俺を買いに来たのかと思ってたから』
「はぁ?お前売春しとんの?」
『してないよ』
俺が次の日に店に行くと本当に宮さんがお店を切り盛りしていた。
「あの後ちゃんと帰ったか?」
『帰ったよ』
俺が正直に答えると宮さんは少しだけ目元を緩めた気がした。
「飯食うてく?」
『……高いの?』
「良心的な値段やと思う」
『じゃあ食う』
俺が席に着くと慣れた手つきで握っていく。俺は辺りを見渡して口を開く。
『…お客さん少ねぇけど大丈夫なの?』
「まだ開店前や」
『…え、』
「鮭で良かったか?」
俺が驚いて顔を上げると目の前に出来たてのおにぎりが出されて口を閉ざす。
『……すんません』
「何が?」
『開店前に来て…、』
「別にええよ」
すると宮さんは俺の隣に腰を下ろして自分で握ったおにぎりを食べ始めた。
『……』
「食わへんの?」
『……いただきます』
1口口に含むと米の温かさがじんわりと広がって丁度いい塩加減が舌を刺激した。
『…美味い』
「俺が作ったんやから当たり前やろ」
『……』
嬉しそうに頬を緩めた顔を見て俺もつられる様に頬を緩めた。
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