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「こんな所で何しとん?」

『……』

「雪降ってきたし寒いやろ?」

『…お兄さん誰?』

「俺はそこでおにぎり屋やってる者やけど」

『…へぇ』

「んで?ここで何しとん?」




公園のベンチに俺が腰掛けていると、黒いキャップを被ったイケメンのお兄さんに話しかけられた。


「寒ないの?」

『……寒い』

「やったら帰った方がええで。風邪ひくぞ」

『……』



俺が黙るとお兄さんは困った様に息を吐き出した。



「帰れん訳でもあんの?」

『……特に、無いけど』

「なら帰った方がええよ」

『……今からゲイバー行く予定だから』

「………ゲイバー?」




俺が答えるとお兄さんは目を見開いた。そしてきっと軽蔑した目を向けるんだ。



「…お前未成年やろ?」

『……違うけど』

「未成年は行ったらあかんのちゃう?」

『…だから未成年じゃないって』

「……とにかく今日は帰った方がええ」

『……引かないの?』

「何が?」




俺が聞くとお兄さんは表情を変えることなく首を傾げた。



『俺がゲイバーに行く事』

「……お前冷やかしに行くんか?」

『そんなわけないだろ』

「なら別にええんちゃう?」

『…は、』




俺が驚いて顔を上げるとコツリと額を軽く小突かれた。



「けど、未成年はバー自体行ったらあかん」

『………』



そう言ってお兄さんは口元をほんの少しだけ緩めた。



『……お兄さん、名前は?』

「は?ナンパか?」

『違う』

「…そこのおにぎり屋の宮」

『…宮さん』

「お前は?」

『…俺は、名前、』

「名前な。とりあえず今日は寒いから帰れ」





これが俺と宮さんの出会いだった。




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