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『結局怪我はその指の切り傷?』
「おん。めっちゃ血が出て大変やったわ」
『嘘つくなよ。絆創膏に血付いてねぇじゃん』
「実際は紙で切っただけやからな」
『…なんでそんな嘘つくんだよ』
「え?やってそうでもせぇへんとお前の顔見れなかったやん」
『……そんな事言われたら許すしかねぇじゃん』
俺が治さんの胸元に顔を埋めるとポンポンと優しく背中をリズム良く叩かれた。
『…あと、あの女の人、誰、』
「女の人?」
『俺が家来た時に出て来た…、』
「……あぁ、あれは常連のお爺ちゃんの孫やな」
『…孫?』
「なんか最近お爺ちゃんが体調悪いみたいで代わりにおにぎり買いに来とったんよ」
『……なんで家に居たの』
「なに?妬いとんの?」
治さんはニヤニヤと楽しそうに笑うとリップ音を鳴らして唇を重ねた。
「前にお爺ちゃんが店に忘れたモンを代わりに取りに来てん。やましい事は何も無いで。それにあの人もうすぐ結婚するんやて」
『………へぇ』
「見るからに安心した顔したな」
『……うっせぇ』
俺は耳を治さんの胸に当てると心臓の音が聞こえて安心して瞼を閉じた。
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