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「いつまでそこで突っ立っとんの」
『……大した怪我じゃないなら、俺帰るよ』
「はぁ?前まで押しかけとったやん」
『……』
「…はぁ、まあええからとりあえず入れ」
宮さんは溜息を吐くとそう言ってキッチンで飲み物を2つ用意していた。
俺も諦めてリビングの床に座ると宮さんは机に飲み物を置くと、俺の前に腰を下ろした。
「んで?」
『…え?』
「あんだけ来とったのに何で急に来なくなったん?」
『……迷惑だと、思って、』
「今更やし、俺は迷惑だなんて思っとらん」
『……』
俺が黙ると宮さんは静かに飲み物を口に含み、ゆっくりと飲み込んだ。
「…正直に言うたらどうや?」
『……なにが、』
「迷惑や思ったから来なくなったんと違うやろ」
『……』
俺は気まずさから机の下で両手で指遊びをしていると、不意に勝手に口が開いた。
『…宮さんみたいな人を天然タラシって言うんだろうね』
「……は?」
『俺と居たら宮さんも悪く言われんじゃない?』
「別にええよ。それに言われへんやろ」
『言われるんだよ。俺みたいなゲイと居たら。それだけで気持ち悪いし、宮さんもゲイだと思われる』
「どうでもええ」
『俺が嫌なんだよ。俺のせいで宮さんまで悪く言われるのは、嫌だ』
「俺は俺の意思でお前と居るんやから関係無いやろ」
『…っ、』
宮さんの言葉に頭がカッと熱くなる。これ以上は言ってはいけないと分かっているのに、酷い事を言ってしまうと分かっているのに、唇は勝手に動いていた。
『……違うだろ?』
「え?」
『宮さんが俺と一緒に居てくれんのは、俺が惨めで可哀想だからでしょ?家族にも、彼氏からも見捨てられて、中学でも浮いてたって俺が話したからでしょ?』
「違う」
『違わない!俺が可哀想だから!そんなのあんたの意思でとは言わない!』
「…名前、」
『っ、……もう、いいよ。十分だよ。あんたはじゅうぶん、俺に優しくしてくれた、それだけでいいから、』
俺が両手で目を覆って膝を立てて丸めると、宮さんはフーっと息を吐き出した。
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