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『……ごめん、なさい、』

「なにが?」

『…また、迷惑かけて、』



2人が去って行った後、小さく宮さんの背中に向かって呟く。


「また、って別に今も前も迷惑かけられた覚え無いけど」

『……』





本当に優しい人だとつくづく思い知らされる。




けど、その優しさが凄く辛い




『……なんで、優しくすんの』

「…え?」

『俺みたいなの放っておけばいいじゃん。今だって迷惑かけたじゃん、なのに、なんで、』

「別に迷惑やない」

『迷惑だろ!本当は彼女と一緒に居たかっただろ!?』

「…彼女?」

『……もう、いいって、……ごめん、』





俺はガタリと力が抜けた様にベンチに腰掛けて項垂れる。





『…宮さんは、優しい所が、ダメだと思う』

「…は?」

『…宮さんの優しい所が俺をワガママにする』

「……」

『……………ごめん、』

「ワガママって、お前は何にも言わへんやん」

『…言ったら、叶えてくれんの』

「出来る範囲ならな」




俺は顔を上げて宮さんを見つめた。



『…じゃあキスして』



俺がそう言うと宮さんは俺の頭に手を回して顔を寄せた。




『……は、なんで本当にすんの、』

「お前がしろ言うたんやろ」

『そっ、うだけど…、』




俺はギリッと唇を噛むと、少しだけ血の味がした。




『………宮さんは、優しいね、』

「……」

『ていうか、冗談だから。宮さんって意外と冗談信じちゃう人?』

「……」

『………ごめんなさい、色々、変な事言って』




俺は立ち上がって宮さんの顔を見ないまま口を開く。




『今日は帰る』




じわりと顔だけが熱くて、体はしんと冷えきっていた。








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