007


「苗字〜、おはようさん」

『……』

「シカトか〜?」

『……はよ、』




朝、教室に入るなり1番に名前の元に寄って来て挨拶をしてくる侑に名前は心底嫌そうに挨拶を返すと侑は楽しそうに笑った。



「フッフ、嫌そうな顔やな〜」

『…嫌だからな』

「正直モンは好きやで〜」

『あっそ』




名前はイヤフォンを耳にはめてゲームを始めると侑の事は気にならなくなったのか集中したように指を器用に動かしていた。



「侑〜!今日練習ある〜?見に行きたいんやけど〜」

「あるで〜」



侑は席が近い女子に話しかけられ返事をすると名前はガタリと立ち上がり教室を出て行ってしまった。




******



「……」

『………』




名前は授業が始まるギリギリに戻って来ると静かに席に着き、またスマホをいじっていた。



「……」


授業中も侑は名前の観察を続けた。そこで気づいたのは名前が授業中に頭を上にあげる事がほとんど無いということだ。誰だって黒板を写すのに顔を上げたり、話を聞くのに顔を上げたりしている中で、名前はほとんど頭を上げなかった。


『……』

黒板を写すのも、本当にそれで黒板が見えているのか。と疑問に思ってしまう程の高さまでしか上げない。


そして先生に指されない為に体を縮こませ前の席の男子生徒の体で必死に自分の姿を隠している様だった。


「……フッフ」

「侑〜、何笑おうとる〜?問題解けたか〜?」

「解けたで〜!この世で俺にしか解けへん問題が今解けた所や!」

「課題プリント1枚追加な〜」

「なんでや!!」



侑は理不尽だと原因である名前を視界の端で確認すると、名前は侑の方など見ておらず机の中でスマホをいじっていた。



*****




『……なんで俺がプリント手伝わないといけないんだよ』

「苗字せいでプリント追加されたんやで!?手伝うのが道理ってやつやろ!?」

『なんで俺のせいなんだよ…。お前が授業聞いてなかったのが悪いんだろ…』




眉を寄せて侑を睨む名前は自分の席に着いて、目の前の席に侑が腰をかけて名前の机でプリントを広げていた。



「早く終わらせんと部活が終わってまう!」

『それは無いだろ…プリントに何時間かけるつもりだよ』



名前は諦めてシャープペンを握り、答えを書き込んでいく。



「…え?」

『お前が書くより早い』



名前はサラサラと答えを書いていくと侑は目を見開いて名前の手を止める。すると名前は顔を上げて侑の目を見る。


「なんで苗字が書いとん!?」

『大丈夫。心配しなくても10割間違えた答えにしておくから』

「あ、ほんま?それならバレへんな〜!………ってちゃうわ!!しかも10割って全部やん!」

『おぉ、ナイスノリツッコミ』



名前は棒読みで侑を褒めるとまたプリントに書き始めた。






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