003


「なぁ聞いとる?」

『………』

「うわっ、手の動きエグっ!」




侑に喧嘩を売ったとも取れるような暴言を吐き出したあの日から何故か名前は侑に付きまとわられていた。休憩中もこうしてわざわざ名前の前に移動してきて腰を下ろして名前に話しかける。



「指の動きエグいのにバレー下手くそやったな〜」

『……』

「てか体育酷かったな〜?」

『……』

「俺は怪我した無いから参加せぇへんかったけど、ドッヂボールやってる時秒で当たっとたよな?」

『……』




名前は侑の無意識に人を煽るこの態度が大嫌いだった。自分は運動神経に恵まれていて、運動神経が無い人間の気持ちなんて分からない、出来て当然といった態度が酷く名前を苛立たせた。



『……なんでここに居んの』

「おっ、やっと喋ったな」

『………』

「なんでって俺のクラスでもあるし」

『………』



名前が言いたいのはそういう事では無い。何故自分の前の席に座っているのか、という事だ。侑もそれが分かっているのかニヤニヤと顔を歪ませる。




『……毎日毎日、飽きないわけ?』

「そういえばスマホ直ったん?結構時間かかったな」

『………』




名前は侑に聞こえるように舌打ちをすると、侑は嬉しそうに目を歪ませた。



『………気持ち悪ぃ』

「はぁ?」



名前は立ち上がり侑を見下ろす。



『…ニヤニヤしてるくせに、目が笑ってねぇんだよ。人の事見下してんのバレバレなんだよ』

「……」

「侑〜!3年の先輩が呼んどる!」

「おぉ!今行くわ〜!」




侑は立ち上がり、前の扉にいる3年の先輩と話を始めた。名前は侑が居なくなり移動する必要が無くなって自分の席に腰を下ろして、チラリと侑を見る。



『っ、』




侑は笑っていながら目はその先輩を蔑むかの様に冷たい視線を送っていた。






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