017(完)
侑と名前が付き合った翌日、名前は何故か緊張も気まずさも感じなかった。名前にとってはあの<Lスした翌日の方が余っ程、気まずく、緊張したからだ。
「おぉ、苗字早いな〜」
『宮も早いな。朝練早く終わったのか』
「俺としてはもうちっとやりたかったんやけど、北さんが遅刻は絶対に許さんて」
『確かに集中して遅刻しそうだもんな、お前』
「はァ〜?しませんけど〜?」
『どうだか…』
名前は小さく呆れた様に、けれども楽しそうに微笑むと侑は名前の頭をワシャワシャと犬の様に撫でる。
『なっ、なんだよ!』
「クソ〜!無自覚さんめ〜!」
『は、はァ!?』
名前は眉を寄せて侑を睨め上げるのと当時にチャイムが鳴り響き、侑が焦った様に席に着く。
「……なぁ、苗字さん」
『……なに?』
名前は後ろの席の男子生徒に声をかけられ目を合わせない様にしながらも顔を後ろに向ける。
「この間お前のスマホの画面見てしもうて…、」
『…え、』
「お前がドラゴンドライブやってるの知って、その、俺とフレンドなってくれへん?」
『………い、いい、けど、』
「よっしゃ!んじゃあ授業終わったらID教えるわ!」
『…うん、』
名前はそう言って前に向き変えると、少しだけ頬を緩めた。
*******
「苗字!ID交換しようぜ!」
『お、俺が出すよ、』
「おぉ!ありがとう!」
名前がスマホを取り出して画面をいじって居ると肩に重みが加わり、グイグイと押される。驚いて顔を横に向けると侑が名前に肩を組み、名前と同じ椅子に腰掛けた。
「ん〜?なんの話ししとんの?」
「おっ、侑やん!」
「なになに〜?ゲームか?」
「そう!苗字がめっちゃランク高いからな、フレンドになってくれって頼んだんよ!」
『…せっ、狭いっ、だろ、』
「え〜?俺ケツ小さいから大丈夫やって〜」
『っ、』
侑は肩にあった手を二の腕に移してガシリと掴むと話を続ける。
「これそないおもろいん?」
「めっちゃおもろいで!な!苗字!」
『う、うん、面白いと、思う、』
すると侑は名前の顔を覗き込み、甘さを含んだ瞳を愛おしげに細める。
「なら俺も始めようかな〜」
「侑は絶対に続かんやろ〜!」
「そんなん分からんやろ!」
名前は赤くなった顔がバレないように下を向いて必死に耐える。
『(まっ、前までっ、何考えてるの分からない奴だったのに…!)』
今では隠す気があるのか。と疑問に思ってしまう程侑は分かりやすかった。侑の纏っている空気が名前は自分のものだと主張している様で名前は更に顔を赤らめる。
「……苗字、体調悪そうやから保健室連れてくわ〜」
「え?…あ、本当やん、顔真っ赤やで?大丈夫か?」
『へ、へい、』
「俺が着いていくし平気やろ〜。んじゃ連れてくな〜」
「おん!次の授業に間に合わなそうなら伝えとくわ〜」
「よろしゅう〜」
侑は名前の言葉を遮る様に答えると、手のひらを掴み、保健室に向かって足進める。
『…あれ、先生は…、居ないのか、』
「…なぁ」
『なんだよ…』
「他の奴の前でそないな顔見せんなや」
『えっ、』
名前は驚いて目を見開くと侑は名前の顎を掬って唇を重ねる。
「俺の事好きで好きでしゃーないって顔」
『っ、そっ、それはっ、お前だって、』
「あれ?バレてたか〜。まぁしゃーないやん?」
侑はカラカラと笑うと名前の額と自分の額を重ねる。
「…今日帰り待っててや」
『……部活、長ぇじゃん』
「ええやん。待っとって」
『………仕方、無ぇな、』
「手ェ繋いで帰ろうな〜」
『はっ、はァ!?』
名前は顔を赤く染めて侑を睨むと侑は嬉しそうにふわりと笑う。
「あ〜、ほんまに好きや」
『ばっ、バカじゃねぇの!?』
「え?苗字は俺の事好きやないの…?」
侑は不安げに眉を下げて涙目で名前の顔を覗き込む。
『〜〜っ!すっ、好きだよっ!これでいいか!?』
「フッフ…、ほんまにチョロいな〜」
『はァ〜!?』
侑はゆっくりと名前の頬を撫でて、嬉しそうに笑いながら唇を重ねた。
「好きやで」
『…お、れも、好き、』
そう言って2人はもう一度唇を重ねた。
〜END〜
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