014


『………』




侑とキスをした翌日、名前はキョロキョロと周りを警戒する様に瞳を忙しく動かす。



『……』




名前の息が整うと侑は名前を保健室に連れて行き、自分は授業へと戻って行った。授業に出れる状態では無かった名前は酷く助かったが、別れてからは侑とは話をしていない。



「おっ、侑や〜、おはよ〜」

「おはよ〜」

『っ、』




侑の声が聞こえ名前は小さく体を揺らす。すると侑は名前の顔を覗き込むように視界に入って来た。




「苗字もおはよ〜」

『お、おは、よ、』

「侑おはよ〜」

「お〜、おはよ〜」





その後に友人と会話する侑に名前は目を見開いた。




『………』





名前はお門違いな怒りを心の中で爆発していた。




『(普通かよ…!!あんなキスしといてなんで普通に接してんだよ!!もっと、こう…、やきもきしろよ!!昨日の夜気にしてた俺が馬鹿みてぇだろうが!!)』



名前は苛立ちからスマホをタップする指が強くなり画面からはガンガンと音がしていた。




『…………ちっ、』




ゲームもらしくないミスをして思わず舌打ちが漏れる。




********




そのまま侑と話さず、目も会わないまま放課後になり侑はチャイムが鳴ると同時に教室から出て行った。



『……』




名前も立ち上がり、リュックを背負うと校門目指して足を進める。




「名前」

『信介』

「帰るの早いな」

『教室に居てもする事無ぇし』

「予習と復習はせぇよ」

『分かってるよ』




体育館から顔を出した北に声をかけられ足を止めると、北の背中越しに侑の後ろ姿が見えた。



「……名前?」

『えっ、あっ、なに?』

「用は無いんやけど、ぼーっとしとったから」

『へ、平気っ、じゃあ、俺帰るな』

「おん、気をつけてな」





慌てて視線を逸らして駆け足で校門を目指す名前を見て北は首を傾げ、そんな姿を見て侑が目を細め笑みを浮かべる。









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