MSBY ブラックジャッカル


『……稲荷崎の集まり?』

「おん。年末にな?みんなで集まろうって話になってん」

『へぇ〜。良いんじゃない?行ってきたら?』

「………」

『…え?なにその目…、なんで私は快く送り出そうとしてるのに責められてるの?』



名前は侑の部屋のリビングで雑誌を読みながら言葉通り、快く侑を送り出そうとしたら侑は名前の目の前で仁王立ちをしてジト目で名前を睨んだのだ。



「…なんで引き止めんの?」

『え?なんで引き止めるの?』

「集まりやで!?泊まりがけやで!?」

『まぁそうだろうね』

「ええの!?ほんまに!?泊まりがけで行っても!」

『だから良いってば!!行ってきなよ!!』

「なんでやねん!!」

『なんでやねん!?』



侑の言葉に名前が驚いて顔を上げると侑は涙目で名前を睨んでいた。




「俺は名前が烏野の集まり行くって言うたとき止めたやん!」

『それがまずおかしい事に気付こう?』

「なのになんで名前は止めへんの!?」

『なんで止めて欲しいの?ちょっと頭悪いのかな?この子』

「俺が浮気したらどうするん!?」

『浮気するの?』

「せぇへん!!」

『あれれ〜?おかしいぞ〜?』




名前は頭を捻ると持っていた雑誌を奪われて侑が名前の隣に腰を下ろすと、名前の脇に手を入れて持ち上げて自分の膝の上に名前を下ろす。



『…なに?』

「引き止めてや」

『はぁ?』




侑は名前の首筋に顔を寄せて額を擦り付ける様にグリグリと左右に動かす。



「引き止めてやぁ〜!」

『…なんでそんなに引き止めて欲しい訳?久しぶりにみんなに会えるんでしょ?』

「俺が神戸むこうで浮気したらとか不安やないの?」

『…さっき自分で浮気しないって言ったじゃん』

「せぇへん。せぇへんけど…、」

『けど?』




名前が続きを促すと侑は名前の身体を抱きしめて首筋に小さくキスを落として肩に顎を乗せる。




「…俺ばっか必死やん。俺ばっかが好きみたいで嫌や」

『……』

「俺も名前に愛されてるって感じたい…」




段々と小さくなっていく侑の声に名前は溜息を吐き出した。その溜息に侑はビクリと身体を揺らす。



「な、なーんてなっ!じょっ、冗談や!」

『…侑』

「冗談やで!?冗談やから、その、……呆れんといて…、」



名前は体を離して侑の頬を包むと、侑は悲しそうに眉を寄せて瞳には薄く膜が張っていた。




『……私は侑が好きだよ』

「……」

『言葉にする事も態度にする事も少ないけど、でも本当に侑が好きだよ』

「………不安に、なんねん、」

『……』




苦しそうに顔を歪めた侑は頬を包んでいる名前の手に自分の手を重ねる。




『いつもの自信家の宮侑選手はどうしたの?』

「…名前に関してはいつも自信無いわ」

『……』

「…いつか俺の前から居らんくなるんやないかって、いつも不安や」

『……普通、その不安は私が感じる物だと思うんだけど?』

「俺には名前しか居らんけど、名前には他にも居るやん」

『人をビッチみたいに言わないでくれる?そんなの居ないから』

「…繋心くんとか居るやん」

『あれは家族みたいなものだから』

「……名前は可愛ええ子好きやん」

『………』

「いっつも星海選手、星海選手って、」

『……』

「……恋愛の好きやない事くらい分かっとる。分かっとるけど、不安やねん」



名前は侑に聞こえないくらい小さく溜息を吐くと、侑の額に唇を寄せて小さくリップ音を鳴らして直ぐに離れる。




「……は、」

『…今日は甘やかしてあげる』

「……」

『どうしたら侑の不安は無くなる?』

「……好きって言うて欲しい」

『好きだよ、侑』




名前はそう言って侑の頬にキスを落とすと侑は少しだけ頬を染めて、目元を安心した様に緩める。



「…もっと、もっと言うてや」

『好きだよ』

「…ん、」

『大好き』

「…おん、」



名前は侑の手を取って手のひらにキスを落とす。


『私の事が大好きな所も、バレーが大好きな所も、甘えたな所も、すぐ不安になっちゃう所も、面倒くさい所も、…全部、全部好きだよ』

「……面倒くさいは余計や」

『そんな所もひっくるめて好きだよ。こんな面倒くさい侑と付き合えるのは私くらいだよ』

「……俺かて、名前の事じゃなければ面倒くさくないわ」

『あらま、そんなに私の事が大好きなのね〜』

「……うっさいババア」

『黙らっしゃいクソガキ』





侑は染まった頬を隠すように名前に抱きついて頬にキスを落とす。




「……そんなババアに惚れとる俺の負けや」




そう言って侑は名前と額を合わせてゆっくりと唇を重ねた。








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