何をするにも灰羽リエーフは目立つ男である。それは本人の気性もだけれども第一条件としてはやはりその容貌が目を引くのだ。2メートルに近い長身、長い手足、きらきら光る人工ではない髪に街を歩いていても、電車に乗っていても、教室で授業を受けていても、普通に男子高校生をやっているだけで周囲の視線はこいつに集まってくる。の、だから。

「わざわざ目立つことする必要ねえだろうってのに」
「?なんかいいました?」

こてり、と長い男が首を傾げる。言ってないからちゃっちゃと決めてしまえと押し付けたメニューは白だ。ベージュと白と淡い桃色で統一されたいかにも女子が好きそうなこの空間は間違えてもでかい男二人がいていいものではない。居心地の悪さに背を丸める。勘弁してくれ、もとから姿勢はそんなに良くないんだから。


白い食器にちんまりと乗って運ばれてきたのは艶艶したチョコレートケーキだった。甘い匂いに囲まれているだけでもういっぱいいっぱいな俺とは違ってリエーフはその四角い物体を喜色満面といったように眺めてはアーモンドのような目を輝かせる。

「黒尾さんこのキラキラしたのってなんですか?」
「アラザン」
「うまい?」
「食ってみれば」

答えを与えず促せば銀色の粒を銀のフォークの先でつきながら目立つ男はぐっと体を折り曲げた。しかめっ面で目を凝らして得体のしれないものを観察している姿をぼおっと眺めて、不意に笑いそうになる。丸い銀色がふたつ。大と小。どちらも光を反射して鈍く輝いている。茶黒チョコレートの上でぽつんと飾られた極小さな銀はそれでもしっかりと存在を主張していた。じい、と目を惹かれる。同じ銀だ。硬質で、光を放つ淡く強く絶対的な。

「黒尾さん。これなんか、めっちゃ硬そう」

ぱっと上げられた顔があんまりにも嫌そうで耐え切れずに噴出した。きょとんと独特の虹彩が開かれてなんでもねえよと喉を震わせたまま珈琲を流し込んだ。苦味に口角を引き上げる。そりゃあ、そう簡単に食われるわけにはいかねえよなあ。
鈍く淡い銀は主張する。











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