はじめて話をした時のことを覚えている?アタシ、とっても頭にきたからよく覚えているわ。そういって話はじめたアナンダの声はひどく機嫌のいい時のものだったので、アナディタは覚えているわ、と素直に肯定の言葉を口にした。
まだ二人で一つをつくっていたときのこと。それを無遠慮に、無神経に突き刺してきた彼女のこと。見えない瞼の裏にその感触を思い出して、アナディタは当時の自分たちの気持ちをなぞりあげる。
頭にきたって貴方はいうけど、私たちだってとってもショックだったもの。意地悪な人って思ったわ。
言わないでって言ったのに。二つに、わけてなんてほしくなかったのに。二人で一つの私と妹が作り上げたものを何の躊躇もなく壊されたとき、自分の中に浮かんだ感情がざらりとよみがえって眩暈がした。忘れるわけないわ。いうと機嫌よく彼女が吐息で笑う。

「未来を見たいと思えるくらい大好きな人がいないなら、私達がなってあげる」

聞き覚えのある言葉だった。
棘のある、傲慢にも聞こえる音をアナンダがわざと選んだのがわかって眉を寄せる。本当に意地悪なんだから。心の中で思うけれど、きっと彼女にはこう聞こえたのだろう。

「最初に言われた時、絶対大嫌いだと思ったわ」
アナンダがアナディタの髪に触れる。言葉のわりに弄ぶ指先はそのくせ丁寧で、ああ、これが二つを一つに変えたのだと思った。

「今も嫌いなの?」

ねえ、といった答えに返事はなくて、かわりに頬に手が触れた。近づく気配が返事になることを今のアナディタは知っている。ずるいわ。
不満の声を笑う甘さでさえ、本の少し憎たらしい。

唇に触れる間際、今更でしょと囁く声は、やっぱり変わらず意地が悪くて、空を切ることがないように抱きしめた。









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