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2018/12/07

サジアン


触れる手も、頬も、唇でさえ、感じたあたたかさは既にない。冷たそうに見えて、だけど案外に体温が高いのだと知ったのはどれくらい前のことだっけ。あのとき、お前はどんな顔をしていたっけ。
「……ああ、確か」
困ったように、嬉しそうに眉を下げたのだ。こんなときだっていうのに思わず乾いた笑みが滑り落ちたのを、隣にいた誰かが不謹慎だと小さく咎めてきた。構うものか。少し歪な指先が、利き手に添うバイオリンを弾くことはもうないけれど、特別に仕立てたタキシードも、大きな花束だって、ただ一人のためにあるのだから。胸に花を抱かせて、もう一度頬に触れる。身を屈めて閉じる瞼の裏で、ああこれが人前でする最初のキスだと思った。おやすみユリアン。良い夢を。
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