最果てまでワルツ | ナノ
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 リンの葬儀は、リンの自宅ですぐに行われることになった。
 わたしは任務が入ってしまったので、しばらく里を離れることになり、やっと再会を果たしたときには、リンは名前が刻まれた墓石になっていた。
 まだ真新しい墓石の周りには、手向けられたばかりのたくさんの花が風に揺れている。そこに白と薄い紫の花をまとめた花束を加え、手を合わせた。
 中央に木ノ葉の紋が記されている石の上部に、『のはらリン』としっかり彫られている。
 これからリンは、このたった五文字で識別される。
 リンの姿や声や、仕草、笑い方。リンがどれだけ優しかったか、菫の花のような子だったかは、写真の類か、残された者の記憶の中でしか生きられない。
 死ぬということがそういうことだと、オビトと、父とで知っているのに、再び思い知らされ、ひたすらに頭を下げるしかない。

「リン……ごめんね……」

 守ると言ったのに。戦争を終わらせたら、一緒に海へ行こうと約束したのに。
 わたしは何もできなかった。リンが攫われたことすら知らず、救おうともできず、リンが死ぬその場にすら居られなかった。
 リンを守れなかったわたしを、オビトは何と言うだろう。どうして守ってくれなかったんだと、わたしを憎んでいるかもしれない。

「ごめんなさい……オビト、リン……」

 謝罪の言葉しか紡げない自分は、まるでオビトが死んだときの、リンたちのようだ。ただひたすらに、わたしに謝っていた。いざ自分の口から「ごめんなさい」しか零れないとなると、リンたちの気持ちが痛いほどよく分かった。
 許されたいわけではない。責められることから逃げたいわけではない。それ以外の言葉を忘れてしまったかのように、唇は謝罪しか紡げなくなるのだ。



 リンが死んで、そう間を置くことなく、第三次忍界大戦はやっと終わった。
 岩隠れとの平和条約が締結したことにより、争うことは、形としてはなくなった。
 一般の人たちには、明るい表情が戻ってきた。やっと戦争が終わったと、みんな晴れやかだ。
 もちろん木ノ葉の忍たちも、もう連日のように前線に送られることもなく、毎日毎日、死を間近に感じて神経をすり減らすことも少なくなったので、戦争中よりも楽に呼吸ができる気分だろう。
 だけど、仲間を亡くし、親や子や兄弟を亡くし、恋人や夫や妻を亡くした者があまりに多く、手放しで喜べる人は少ないように見える。
 わたしとて、好きな人を亡くし、父を亡くし、親友を亡くした。平和条約という、言ってしまえばただの約束事で安寧を築いたところで、心から安心することなどできない。
 だってわたしは、約束など簡単に破られてしまうことを知っている。


 戦争が終わったあと、忍の一部は、戦闘に巻き込まれ被害を受けた地域を復興させるべく、現地へと送られている。忍術を使えば重い岩をどかすことなど容易いし、壊れた家を建て直すための木材の調達も、一般人が道具や機械で行うよりずっと早い。医療忍術を施せば怪我の治りも良く、働き手の復帰も短縮される。

 わたしも何度か派遣された。主に炊き出し係で、たくさんの豚汁や、炊き込みご飯のおにぎり、カレー、鶏団子のスープを作った。大鍋にたっぷりの食材を入れ、掻き回し続けていると、

「女の子なのに力持ちね。やっぱり忍は違うのねぇ」

と現地のおばさんに感心された。
 忍になって数年。わたしが顔を合わせる相手は圧倒的に忍の方が多くなり、世間話をするのだって額当てを付けた人たちとばかりだ。他の女の子と自分を比べるときも、たいてい『忍の女の子』と比べる。
 忍じゃない、わたしと同世代の子には、こんなに掻き回し続けるのは難しいことだと言われると、自分が普通の女の子じゃないと言われているようで、少し不思議な感覚だった。

 現地での炊き出しの当番を済ませ、久しぶりに里へ戻った。花屋で、リンとオビトと父の分の花束を買い、無言の墓石や石碑に挨拶を終えると、どこへ行くでもなく、里の中を歩き回った。
 リンとよくお揃いを買った、可愛い小物が売っているお店。オビトとお菓子を買った、分厚い眼鏡をかけたおばあちゃんがいる駄菓子屋。
 里の中には、二人との思い出があちこちにある。戦が終わって平和な日常に染まりつつある中、それらは全て穏やかで、明るくて、余計に目についてしまう。
 家に帰ってしまおう。思って、自宅へと足を向けていると、突然ガイに引き留められた。

「サホ。カカシとの友情を取り戻そう!」

 極太の眉に、下睫毛が目立つ姿から放たれる暑苦しさが、わたしの両肩をがっしりと掴む。やんわりとその手を払って、ガイに背を向けた。

「サホ!」
「放っておいて」
「放っておけるか! お前とカカシが仲違いしているなど、カカシの永遠のライバルとして、サホの友人として、見過ごせるわけがない!」

 歩き出すわたしの前に、ガイが素早く回り込み、行く手を阻む。面倒な相手に捕まったと、思わず口からため息が漏れた。

「オレたちも同感だぜ」

 新たな声が後ろからかかり、顔だけそちらを向けると、アスマと紅の二人が並んでいた。少しだるそうな立ち姿のアスマと、どことなく心配そうに見える紅の表情を確認したあと、またため息が出てしまった。

「サホ。リンが死んだのは、私たちも悲しいわよ。だけど……」

 紅がわたしに語りかけるけれど、『だけど』と言ったきり、その先は続かなかった。大方、『カカシが悪いわけではない』や、『カカシだって悲しんでいる』とか、そういう当たり障りない言葉を言おうとしたが、口にできなかったのだろう。

「お前とカカシが、リンを守ろうって約束していたからこそ、カカシが憎いのも分かる。だけどな――」
「分かるなら放っておいてよ」

 紅が言えなかった続きを引き継ぐように、アスマが口を開いたけれど、遮って突き放した。
 わたしがカカシを憎いと思う気持ちを理解してくれるのなら、今は関わらないでほしい。『分かるけど』と前置きすれば、カカシとのことに口出ししてもいいと思っているのなら、それは自分勝手だ。わたしの気持ちを慮っているようで、実際は自分たちの都合のためだ。わたしとカカシの仲がこじれていると、自分たちが迷惑だからだ。

「もう、みんなの集まりとか、そういうの、わたしは誘わなくていいよ。カカシだけ誘ったらいい」

 だったら、わたしのことなどもう気遣わなくていい。わたしが離れれば、残るはカカシだけ。カカシだけがみんなの傍に居れば、みんなは気を揉む必要がなくなる。
 大体、こうして声をかけられる度、自分が間違っていると言われているようで、わたしだって嫌だ。
 わたしとカカシとのことで、みんなが息苦しい気持ちなのは分かっている。仲間内でこじれた二人が居るせいで、振り回して付き合わせて、申し訳なさもある。だから責め立てられているようでつらい。

「そんなことを言うな! サホもカカシも、オレたちの大事な仲間だ! 何人たりとも欠けるなんてない!」

 ガイが拳を握り、力説する。ガイの言葉にはいつも裏がなくて、嘘を感じられないから、他の誰の言葉よりもストレートに伝わる。
 ガイは本当に、わたしのこともカカシのことも大事だと思っていて、どちらか一方を切り捨てるような付き合いはしたくないと考えている。

「でも、欠けたじゃない。オビトもリンも、居ないじゃない」

 わたしの言葉に、ガイはぴたりと動きを止める。表情を強張らせ、握った拳をそのままに黙り込んだ。後ろに居る二人も、揃って口を噤んだままだ。
 誰もわたしに反論しないこの隙に、前に立つガイの横を通り過ぎて、三人を置いて行った。「サホ!」と、呼びとめるかのように名前が飛んできたけれど、誰も追ってくる気配はない。
 誰も、オビトとリンが居ないことを否定してくれない。二人はもう居ない。居ないのだ。



 カカシの病室を出てから、わたしは一度もカカシに会っていない。
 会いたいとは思わなかったから、慰霊碑や墓を除いた、カカシが居そうな場所は極力向かわなかった。
 恐らくカカシもわたしを避けている。だからまったく会わない。

 ヨシヒトとナギサも、リンが死んだことにとてもショックを受けていた。
 ナギサにとってリンは、同じ医療忍者の後輩だし、見た目が怖い自分に物怖じしないリンを、ナギサなりに可愛がっていた。
 ヨシヒトも、ちょくちょく『美しさとは』と語りかけて、真面目に聞いてくれるリンを気に入っていて、ナギサとはまた違う形でリンと親しかった。
 それでも二人は、オビトの死を受け入れたときのように、しばらく気落ちする様子はあったけれど、今やるべきことをやらなければとしっかり前を向いている。
 わたしがカカシを恨んでいると知っても、みんなのように口を挟むことはしない。言いたいことあるらしいが、それを口に出してわたしに伝えることはなかった。

 クシナ先生は、ミナト先生から病室でのことを聞いたのか、顔を合わせる毎に、わたしに何度も「あのね」と声をかける。

「分かってます。でもお願いですから、今は何も言わないでください」

 その度にそう返して、クシナ先生を黙らせた。師匠でもある上司に対し、ひどい無礼を働いているとは分かっている。けれどクシナ先生はわたしがそう言えば、きっと気持ちに寄り添って何も言えなくなると踏んでいた。
 オビトが死んだときは戦争中だった。死んだ仲間へ哀悼する時間も捨てて、前線に向かわなければならなかった。
 もし戦争が終わらず、今も長引いていれば、カカシとの任務を命じられることがあったかもしれない。その際に連携が取れず、失敗したり死んでしまう可能性を考え、わたしを殴ってでもカカシと引き合わせただろう。
 だけど戦争が終わった今は、無理に喝を入れてまで、わたしとカカシの仲を修復する必要はない。だからクシナ先生はわたしに強いることはない。
 打算的な自分に嫌気が刺すけれど、わたしはそのときようやく、『戦争が終わってよかった』と考えてしまうくらいに、独り善がりな人間に成り下がっていたから、もう今更だった。



 多くの住人の、終戦への歓喜と安堵の気持ちが落ち着いてきた頃、ある高札が立てられた。現火影である三代目が座を退き、四代目火影の就任が決定した、という内容だ。
 四代目はミナト先生だと記されていて、わたしはそれを認めたあと、集まっている人垣から逃げるように去った。

 その日の夜、家に訪問客があった。兄は任務に、母は町内会の集まりで家には誰もおらず、鳴った呼び鈴に従うように、玄関へ向かった。大して警戒せずに戸を開けると、真っ先に目に飛び込んできたのは、夜中でも眩しく見える金髪だった。

「ミナト先生……」
「こんばんは。サホ、少しいいかな?」

 ミナト先生は微笑んだ。悪意のない訪問者に対し「だめです」と拒否できるほど、わたしは強くない。

「どうぞ……」

 入りやすいようにと戸を大きく開いて、客用のスリッパを出した。ミナト先生はサンダルを脱いでスリッパを履く。リビングへ通し、ソファーに座ってもらい、わたしはキッチンへと入り、取り急ぎ薬缶に水を入れて火にかけた。

「ああ、いいよ。話が終わったら、すぐにお暇するから」

 ミナト先生がお茶の用意をするわたしを止める。と言われても、客人にお茶を出さないで帰すのは、なんだかきまりが悪い。

「本当に、いいんだ。今も呼び出されていて、すぐ戻らなきゃいけないんだけど、サホと話をしたくて。だから、こっちに来てくれないか」

 ミナト先生は、自身の向かいの椅子を指差して、そこに座れと示す。そこまで言うならと、わたしは火を消して、手に何も持たないままリビングの椅子へと腰を下ろした。

「お忙しいなら、また今度でも……」
「オレも、時間を取ってゆっくり話したいんだが、そうもいかなくなったからね」

 呟く先生は、なんだか疲れているようだった。昼間に見た高札のことを思い出し、それもそうだと、一人納得する。

「火影就任、おめでとうございます」

 立って椅子の横につき、頭を深く下げ、お祝いの言葉を述べた。

「ん。ありがとう」

 先生は一言礼を返すと、「頭を上げて、座って」と促した。丸めていた背をゆっくり戻して座り直し、ミナト先生と改めて向き合うと、真剣な顔がそこにあった。

「オレが、何を話しに来たのか、もう分かっているよね」

 確信を持った口ぶりに、そうだと素直に頷くのはいやだった。
 わたしの答えを聞くより先に、ミナト先生は両膝に拳を置いて、さきほどわたしが礼を取ったときと同じように、深く深く、頭を垂れた。

「ミナト先生!?」
「頼む。カカシのことを許してやってくれないか」

 四代目の火影となる人が自分に頭を下げている、という図に驚くと、ミナト先生は頭を下げたまま、カカシのことを口に出した。カカシのことを話に来たと分かっていたけれど、実際にこう言われると、頭も体も拒絶反応を見せて、ミナト先生の金髪から顔を逸らした。
 ガイや紅だったら、友達だから、「いやだ」と一言告げればいい。だけど相手はミナト先生。わたしにとっても、風遁の術などでお世話になった師匠だし、もうすぐこの里を治める火影となる人だ。そんな人に、幼い子どものように突き放す行動は取れない。
 黙るわたしに、ミナト先生はおもむろに体を起こし、頭を上げて「サホ」と名を呼んだ。

「絶対に守るって……守ろうって、約束したのに……」

 口から出たのは、恨み言だった。それと同時に、だから許せないのだという、ミナト先生への言い訳。
 ミナト先生はわたしの拗ねた物言いを叱ることもなく、口に含んで嚥下するかのようにしばらく黙ったあと、もう一度「サホ」とわたしを呼んだ。

「今回の件は、表向きには、カカシがリンを殺してしまったと伝えられている。不運な事故だったと」

 『表向き』と、『事故だった』と、ミナト先生はわたしの脳内に深く伝わるようにと、語気を強めた。

「リンはね、恐らく……自分で死を選んだんだ」

 驚いて先生の方を向くと、苦しい表情をしていた。整った顔立ちは歪められても、その美しさを保っている。それどころか、優れた容貌はそれくらいでは崩れないということを証明しているようだ。

「リンには、詳しくは言えないけれど、霧隠れの忍によって、爆弾のようなものが埋め込まれてしまっていた」
「爆弾……」

 初めて聞く内容だった。恐らく、ミナト先生としても、その『爆弾』に関しては口外する気はなかったのだろう。だけど、わたしの頑なな態度を見て、カカシとの和解へ繋げるには言うしかないと判断したに違いない。

「そのままリンが里に帰れば、その爆弾が発動し、里を破壊する手筈だったんだろう」

 そんなにも大きな被害を起こす爆弾が――と、少し肝が冷えた。この木ノ葉の里は忍の里。つまり、主要の戦力はここに集まっている。その里が落ちれば、里に住まう者はもちろん、火の国自体がついに滅ぼされる可能性もある。各国が要する隠れ里は、国を支える大きな要なのだ。

「そのことに気づき、里にも戻れず、しかし爆弾を取り除くことも容易ではないと知ったリンは、自分が死ぬことが最善の手だと考えたに違いない」

 その説明に異論は出てこなかった。リンは優しく、頭がいい。自分のせいで里が滅ぶのなら、それを未然に防ぐことができないのなら、自分の命と引き換えに里を守ることを選んでもおかしくない。

「でも、でもカカシは」

 リンの考えは分かる。だけど、でも。カカシは自分が守るって、オビトの代わりに守るって、そう言ったのに。

「カカシは何とかリンを死なせずに、その爆弾をどうにかして取り除こうと考えていたんだ。リンを守ろうとした。だけど霧隠れが追ってきて、増援もなく、里にも戻れぬ状況では、カカシにはどうしようもなかった。いいかい。カカシは、リンを殺すために雷切を使ったんじゃない。追ってくる霧隠れに向けて放ったけれど、リンが自ら間に入り込んだんだ」

 リンが自ら、カカシの手で死ぬことを選んだ。カカシはリンを守ろうと尽力した。
 そんなの、今更聞かされても。カカシはそんなことは言わなかった。たしかに『霧隠れを狙ったのに、リンが前に』とは言っていたけれど、『リンが自分の意思で、雷切に貫かれるために前に立った』と言わなかった。
 言えばよかったのに。あれは謂わば自害だったのだと。どうして最初からそう言わなかったの。
――言う前にわたしが責めたから? ちゃんと説明するつもりだった? わたしが全部聞こうとしなかったから?
 そんな、そんなの、だってカカシが、カカシが、『殺した』って、言うから。

「リンが死を望み、カカシが、本人の意思はどうあれ、それを叶えてくれなければ、里は滅んでいたかもしれない」

 わたしの頭に、復興支援のために現地へ赴いたときの光景が浮かんだ。建物の多くが崩れ、欠けていた。地面は、土遁のせいかあちこち隆起していて真っ直ぐ歩くことも難しく、収穫寸前だった作物は燃えて灰になっていた。
 里がもしあんな光景に変わったら。恐ろしくて、ぎゅっと目を閉じた。

「一を死なせ、千を救うのが最良だとは言えない。その一は、ただの一ではなく、誰かにとっての『たった一人』なんだから」

 そっと目を開けると、ミナト先生の、きれいな青い目がわたしを捉えていた。澄んだ青空の目は、綺麗事を述べているのではなく、波風ミナト自身の気持ちを吐露していた。

「だからどうか、覚えておいて。誰よりカカシが一番、悔いているんだよ」

 ミナト先生は、説くようにそう仰った。まだ四代目に就任していないのに、もうすっかり火影様だった。里の皆をまとめ、正しく導く、里長だ。

 そんなの、分かってる。

 カカシが一番後悔していて、傷ついているなんて知っている。
 リンが自分から雷切に貫かれて死んだのだと言わなかったのは、カカシ自身が誰よりも『自分がリンを殺した』と思っているからだ。
 自分を守るための無様な言い訳などせず、面と向かってありのままを打ち明け、わたしに謝るカカシは、わたしに対して逃げることなく真摯であろうとした。事情をきちんと把握もせず突き放し、『だって、でも』と理由を探して一方的に彼を恨む、自己中心的なわたしとは大違いだ。

 病室でカカシと話す前にミナト先生に、『カカシを恨まないでくれ』と言われて頷いた。あのときは本当に、リンを守りきれなかったことを責められないと思っていた。
 だけどカカシがリンを殺したと言い出したから。
 誰かではなく、守り手のはずの自分が殺したと告白したから。
 カカシが、カカシが。

 そうやってわたしは、カカシに全ての責任を押し付けているだけだ。カカシを憎むことで、恨むことで、リンを守れなかった自分の無力さをうやむやにしているだけだ。
 分かってる。分かってる。
 カカシは悪くない。
 カカシはリンを守ろうとした。
 リンも里を守ろうとした。
 悪いのはリンを攫い、爆弾を仕込んだ霧隠れだ。
 分かっているけれど、だけど――オビトのことを考えると、どうしたって許せないことも、また、許されないのだろうか。



29 真実だけでは足りない

20180629


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