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平和生存IF
(夢主のためにカカシがリンと付き合う)



リンがカカシに告白し、カカシは「自分がリンと付き合えばサホの恋がうまくいくかも」という自己犠牲心と、サホが自分を全く見てくれない望みのない状況ならいっそ……という逃げでリンと付き合う、リンが一番可哀想で不憫かつカカシが最低野郎になっちゃうルートなので没。
ちなみにカカシの好きな人がサホだということは、今の時点で誰も気づいていないのが前提。
また、『自分はリンが好き』ということはサホには伝えていないので、オビト自身は知られていないと思っている。


リンとカカシが付き合ったと聞いてめちゃくちゃショックを受けるオビトと、リンの好きな人ってはたけくんだったんだ、と驚くサホ。
サホはオビトのひどい落ち込みっぷりを見て「そんなにもリンが好きなんだ」とやるせない。
でも千載一遇のチャンスだと頑張って落ち込むオビトを支えようとするんだけど、オビトにとって世の中の女の子は『リン』と『リン以外』の二通りしかないから、サホのことはいい仲間で友達だけど女の子としては眼中にない。
オビトは幸せそうなリンを見て、自分じゃあんな顔はさせてやれなかったのかと悲しいけど、リンが幸せならそれでいいのかもいや無理無理無理リン好き大好きぜってー無理!と諦めきれずリンを想う。
サホも挫けずに何とか頑張るけど、誰かと付き合っていると分かっていてもリンを諦めきれないオビトだから報われることは何一つなく、次第に笑うより沈んだ表情が多くなる。やっぱり自分じゃだめなんだなーでもリンを諦めないオビトを自分も諦めきれないなーって苦しい。

カカシとリンは一応付き合ってるけど、二人で出かけるようになった以外は特に今までと大して変わらない。
任務でもそれ以外でも四人でつるんで飲んだり食べに行ったりすることも多い。ただそういうときに隣の席に座るようになったりとか、そういう細かいところで付き合っている感を出すようになったので、オビトは表向き平気そうなフリをしてるけど毎回ショックで、ショックなのにリンに悟られないようにと平気なふりをするオビトを見てサホもうまく笑えなくて、そのサホを見てカカシも内心、こんな顔させるためにリンと付き合ったわけじゃないのに、と複雑。
リンはカカシとデートの日は可愛い服を着たり「今度映画に行きましょう」と誘ったりする。でもカカシは常に受け身で「可愛いね」と言ってくれるけど、キスどころか手を繋ぐこともないし、肝心な距離感が今までと変わらず恋人っぽい雰囲気は全くない。
だからもっと頑張ろうとする、そういう一所懸命なリンを見て、リンを好きじゃないのに付き合って、こんなに頑張らせてオレ何やってんだろと自己嫌悪。


たまたまサホとカカシが任務だか何だかで二人で会ってる時に
「リンとどう?」
と訊かれ、平静を装って
「うまくやってるよ。そっちはどう?」
と問い返すと
「オビトはやっぱりリンしか見えてないみたい」
と返し落ち込むサホ。

「それにしても、リンがはたけくんを好きだったなんて知らなかったなぁ。はたけくんもリンを好きだったんでしょ? 両想いなんて羨ましい」
と友達の恋路が上手くいってよかったと喜ぶサホに、違う自分が好きなのはサホだと伝えたくなるが、伝えればきっとサホはこうして自分と話したり自分を頼ったり打ち明けたりしなくなる、と思って踏み留まる。


カカシとの気持ちに明確なズレを感じ取り、カカシを観察することにして、ようやくカカシは自分ではなくサホが好きなのだと気づきショックのリン。
じゃあどうして私と付き合ってるの?と疑問。

ついにカカシに
「本当は私のことは好きじゃないんでしょう? サホが好きなのよね?」
と問うと、カカシはとうとうバレたと口を噤んでしまう。
「否定しないんだね」
「……」
「嘘でも『そんなわけない』って言ってくれないんだね」
「……」
涙を流すリン。傷つけてしまった、やっぱりこんなことしなけりゃよかった、と後悔に苛まれる。

「別れましょう。今まで付き合わせてごめんなさい」
とリンから別れを告げ謝罪まで受け、
「リンは悪くない。オレが馬鹿だった。ごめん」
と謝るが、リンは何も言わずに去っていく。


リンの元気がないことに気づき、オビトが
「どうした?カカシとなんかあったか?」
と訊ねると
「別れたの」
と力ない微笑みで別れたことを告げられ動揺。
「な、なんで?」
「最初からダメだったみたい」
「最初からダメって……」
何を言ってるんだと追求すると、はぐらかし続けていたリンがオビトのしつこさと辛い事実に心が折れていたこともあり、カカシは自分を好きじゃないのに付き合ってくれた、と説明し、それを聞いたオビトはカカシにブチギレてカカシを探す。

探した先でタイミングよく(悪く?)カカシと一緒にサホも居て、でも構わずカカシの胸倉を掴んでぶん殴るオビト。
いきなりの行動とオビトの形相に驚いて固まるサホと、「リンのことなんだと思ってんだ!」と怒鳴るオビトに、リンから聞いたのか、どこまで聞いたんだろうと淡々と考えるカカシ。
「オビト落ち着いて。リンがどうかしたの?」
「こいつ、リンのこと好きでもないのに付き合って、リンの気持ちを踏みにじったんだ」
「え? 本当に?」
と訝しげなサホに問われてカカシは目をそらす。
「好きでもねえならなんで付き合ったんだよ!? ムカつくけど、認めたくねえけど、リンはお前と付き合えて本当に幸せだったんだぞ!」
とリンを思って怒るオビトに何も返せないカカシ。
「オビト、ちょっと落ち着いて」
「サホは黙ってろ」
「オビト……」
「なあ、お前なんでそんなことしたんだよ。リンは大事な仲間だろ。なんでそんな、裏切るようなことすんだよ……!」
何も答えないカカシをもう一発殴るので、サホが慌てて制そうと後ろから掴んで止めるが、思いっきり振り払われて壁に叩きつけられる。
一度呻いたあと項垂れるサホに、自分の胸倉を掴むオビトの手を払って駆け寄るカカシ。
オビトの手加減なしをモロに食らったサホは、衝撃を緩和できるように咄嗟にチャクラを練って体を守ったためなんとか意識はあるけど呼吸が苦しそうで顔を歪めてる。
オビトも遅れて駆け寄るが、サホに伸ばした手を、触れるなと言わんばかりにカカシに弾かれる。
「カカシ……」
「お前もサホも、なんで一人しか見えないの?」
「は?」
「……それはオレも同じか」
「おい、カカシ、何言ってんだよ?」
一人ごちるカカシに声をかけるが無視され、サホを抱えて病院に行くというので自分も付き添うとついていく。

病院の忍用病棟の受付に行って処置を受け、骨にヒビが入っているからしばらく安静にと病室のベットで眠るサホ。
無言のカカシの雰囲気が異様なので、声をもかけられないオビト。
そこに、サホのことを聞きつけたリンが慌てて入室。
「サホが運ばれたって」
「ああ……しばらく安静で、今は寝てる」
「そう……。一体何があったの?」
と訊かれるがなんと答えていいのか分からず説明できないオビト。

「全部オレのせいだ」と眠るサホを見ながらカカシが呟く。
「カカシ……」
「リン。ホントにごめん」
「……もういいわ。でもカカシ、私に悪いと思うなら、自分の気持ちはちゃんと伝えて。それが貴方を許す条件にしてあげる」
言って、リンはオビトを連れて病室を出る。

残ったカカシは、自分が馬鹿なことを考えなければ誰も傷つかなかったのに、と自身の浅はかさや勝手さに気が滅入る。
リンにさきほど気持ちを伝えろと言われたが、こんな自分がサホに気持ちを伝えたところでどうなるだろうか、サホはオビトが好きなのに。
ああだからリンは言ったんだ。叶わないことで裂かれる心の痛みを知れと、と勝手に解釈してますます落ち込む。

リンに連れられ病室を出たオビトはいまいち話の展開についていけない。
「なあ、さっきのって…?」
「オビト。私のことを思ってカカシに怒ってくれたことは嬉しいわ。だけど周りをよく見て。サホは私たちの大事な仲間でしょう?」
「……リンだって……」
「オビト?」
「リンだって周りを見ろよ。オレのこと、気づいてんだろ」
「……」
リンは告白はされていないものの、成人するより前頃からオビトが自分を好きだとはっきり自覚していて、でも自分はカカシを好きだし仲間や友人としての距離感が大事にしたくて壊したくなかったので気づいていないフリをしていた。
だけどそれをオビトも薄々気づいていた。いざ告白しようとしても、その度に知らないふりをするリンに壁を作られているみたいでずっと言えずにいた。

「オレ、リンが好きだ」
今しかないと告白する。リンは返事はしなかったが、とうとうオビトの言葉を真正面から受け止める。


任務もあるので病室にいつまでも居られず、カカシは後ろ髪引かれながらも病院を後にする。
その後しばらく置いてサホは目を覚まし、事の次第と治療についての説明を医師から受け、しばらく激しい運動は控えるようにだとか、また来てくださいとか言われて病院を出る。
気を失う前にオビトが言ったことが気になって、どうしてはたけくんは好きでもないリンと付き合ったのか、リンは傷ついていないだろうかと心配。
また、別れてしまったことでリンがフリーになり、オビトにチャンスが。リンが誰かと付き合ったということで、 オビトだってさすがに動くだろうと焦る。
帰宅し、それからは三人に会うことがない。病院でもリンに会わない。珍しいことじゃないけどオビトのことを考えると胸騒ぎがする。

ある夜、任務が終わって帰宅しているとカカシに呼び止められる。
「体は?」
「もう大丈夫だって」
「そう。よかった……」
ホッとしてみせるカカシを前にリンとのことを思い出す。
「はたけくん、どうしてリンと別れたの? ううん、違うね。どうして付き合ったの?」
「……」
「はたけくんのことだから何か理由があるのかもしれないけど、好きでもないのに付き合うなんて……」
「……最低?」
「……そうかもね」
リンのことを考えると肯定してしまい、カカシは自嘲する。
「リンとオレが付き合えばサホに都合がいいと思った。だからリンと付き合った」
「都合って……」
分かるでしょ、と態度を取るので、オビトを失恋させるために付き合ったのだと知る。
「そんなの、わたしは頼んでない! そんなことのためにリンを!」
怒りを露わにするサホから目を逸らす。
自分のせいで親友のリンが傷ついたことが許せなくて「はたけくん、最低だよ」とはっきり言葉にしてカカシの前から走り去る。


この一連の事の発端は自分のせいだからリンに謝りたいけれど、そうなるとカカシがどうしてそんなことをしたのだと説明しなければならなくて、芋づる式にオビトを好きだということがバレてしまう、と悩むサホ。
リンは(少なくともサホの前では)いつも通りなので、せっかくいつも通りに戻ったのに話を蒸し返すのもよくないのだろうかとか色々考えすぎて、リンから見たらあまり元気がない。
「サホどうしたの?何か悩み?」
「うん、ちょっと……」
リンはやっとカカシが気持ちを伝えたのだろうと、ちゃんと伝えなさいと言ったのは自分だけどやっぱり複雑だな、サホはどう返事をするのだろうと、考えていると「リンが傷ついたのは、わたしのせいなんだ」と唐突な話題を出すのでびっくりする。

「サホのせい?」
「……わたし、好きな人がいて。そのことをはたけくんはずっと前から知っていて、応援してくれていたの」
「好きな人……」
「その人ね……リンが好きなんだ」
「え?」と、つい最近とうとう告白されたオビトが頭に浮かぶ。
「わたしの好きな人の、好きなリンと付き合うことで、わたしの恋がうまくいくようにって、そう思ってリンと付き合ったらしいの」
ああ、そっかつまりそういうことなのだと、リンはそこでようやく自分たちの四角関係の全容を知る。

「……ねえ、サホは、どうしてカカシがそんなことをしたのか分かる?」
「……わたしとその人が付き合えるように、でしょ? でも、そのせいでリンの気持ちを蔑ろにするのは間違ってる」
「そうね。悪いことだわ。でも私が言いたいのは、『どうしてサホのためにそこまでしたのか?』よ」
「わたしのために?」
「ええ。カカシは人の心を弄ぶような人じゃないわ。今までだって告白されてもきっぱり断ってきたのよ。身勝手に振る舞う人じゃない」
リンの言葉に、確かにそうだと納得する。カカシは仲間を大事にする人間で、だから他人の恋路を応援するためだけに、好きでもない相手と付き合うなんてことはしないはず。幼い頃から親しいリンなら尚のこと。
「じゃあ、どうして……?」
「分からない? カカシは誰のために私と付き合った?」
「わたしの……」
そこまでいってようやくリンの伝えたいことに気づく。
「私がカカシと別れたのは、カカシが私を好きじゃなかったから。好きな人が別にいたから」
「……」
「サホが病院に運ばれたときに言ったの。本当に好きな人へちゃんと気持ちを伝えたら、今回のことは許すって」
でも言えなかったのね、と苦笑するリンに、何と返していいか分からない。
まさかカカシが自分のことを?だってずっとオビトが好きだと知っているし、片想いの相手がいるのに好きになるなんて、まあでもそれは自分も同じだけど、でもそんなのちっとも気づかなかった。
だめだな、昔からそうだった、オビトの好きな人のことを知るのも遅くて。何も知らないでカカシを愚痴に付き合わせたり「最低」なんて言ってしまった。

「……これは独り言ね。私ね、この前、ある人に告白されたの。その人が私のことを好きだって、なんとなく気づいていたわ。だけど気づかないフリをしてた。その方が私にとって都合がよかったから。私はカカシを好きだったけど、その人との関係も壊したくなかった。私の我儘でその人の気持ちを見ないようにしていたの。でもカカシと別れて自分がどれだけひどいことをしていたか思い知ったわ。相手の『好き』をぞんざいに扱うなんてしちゃいけない。それが、関係を壊したくないほど大事な人であればこそよ。もしサホが、私に負い目があるというのなら、今回のことは私に免じて許してあげて。もう一度、カカシと話してあげてほしい」

そんなことを言われても。
告白されたって、もしかしてオビト? じゃあリンは何と返事をするつもりなの?
そういう思考が伝わったのか
「返事はまだ保留にしてるの。もう逃げずにちゃんと考えるわ」
と言うので、リンは真剣にオビトと向き合うつもりでいるんだと、そう言われたら自分もカカシのことから逃げずに向き合わなければならないんだろうけど……と、何から考えたらいいのか分からない。


20200307
(20190630@Twitter)


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