コンビニから少し離れた公園で俺たちは並んでアイスを食べていた。
公園のベンチはちょうど木陰にあって少しだけ暑さは和らぐ、が

「…暑い」
「ああ」

やっぱりどうしようもない熱がつきまとう。気温自体が高いからどうしようもない。蝉が狂ったように鳴きわめくから余計に暑苦しい。臨也は若干ばてているようにも見える。

「冷房に行きたい」
「…」

俺だって冷房の効いた部屋に帰りたかった。

「冷房冷房冷房冷房冷房!」
「帰ろうとしてたのにアイス食いたいつったのはお前だろ!」

反射的に反論すると臨也はキッと睨んできた。

「…違うもん、」
「何が違うんだよ」

あーあ、本当になんでこんなくそ暑い中外に居なきゃなんねえんだ。
まあ臨也がいるならしょうがないけれど。

「…おいしいー!」
「おい、話をそらすな」
「おいしいよシズちゃん」
「ああもう、はいはい」

だめだ。こいつの相手をまともにしてても疲れるだけなのは経験上良く分かっている。

「シズちゃんは?」
「んーふつう、にうまい。冷てえ」
「ふふふー」
「何だよ気持ち悪りい」
「楽しいねえ」


そういえば臨也のやつ、今日はやけにテンションが高いな。
さっきまで怒ってたかと思えば今度は肩をすくめて笑ってやがる。
前にもこんなことがあったような。思い出せそうで、出てこない。えっと

「臨也?」
「…っ、ふっ」

なんか熱いぞこいつ。触れ合ってる腕から伝わる熱が、熱い。しかも、え?何かこれは、

「泣いてんのか?」

意味が分からない。さっきまで嬉しそうに食ってたかと思えばこれだ。

「シ、ズちゃん…ごめ…な、さい」
「何謝ってんだよ」
「ふっ…、うっ、…ひっく」

臨也は自分の腕を交互にして涙を拭うのだけれど次々と涙が頬を伝う。
泣きじゃくる臨也は何かを堪えるようで、涙はもちろんなんだけど、それだけじゃなさそうで。それはどことなく辛そうで、
ああ思い出した。具合が悪くなったのか。
泣く前に口で言えよ。全くガキか。
猛暑のこの炎天下は臨也には堪えたのだろう。自分からここで食べるって言ったくせにな。

「分かったから」

ひとまず逸るばかりの呼吸を宥めようと背に手をまわす。
ここはあまりに暑いのでもう片方の手に下敷きを持って、扇いでやった。
辛そうに呼吸するので俺に寄りかからせる。こちらに体重を預けてくる臨也はぐったりしてて、なんでこんなことになるまで黙っていたのか、段々むかついてきた。気づかなかった自分にも腹が立つ。いちいちムカついていたら、きりがないとも分かっているけれど。

「なんでっ…おれ…、ごめ」
「いいから」

また下らないことばかり考えているんだろうな。弱ったときばかりこうだ。自重はもっと元気な時に覚えてほしい。

俺はいつも臨也のわがままに振り回されて、それでも好きになったんだ。だからこそ、と言っても嘘にはならないかもな。
何でそんなことも分からないかなこいつは。今さらぐじぐじ考えやがって。


「お前アイスを買うに至るまでの方がよっぽどわがままだったつーの」
「じゃあ、それ、っ嫌い、にな、た?」

…どう飛躍したらそうなるんだ。いつ俺がそんなことを言った。わがままごときでいちいちキレてたら臨也となんて付き合えない。

「お前、自分がわがままじゃないとき時なんてあったか?」
「っ…じゃあ、ず、とっ嫌い、なの?」
「お前馬鹿だろ…」

どうなってるんだお前の思考は。どこをどうしたらそうなる。


「……もうちょ、と一緒に、居たかっただけなの、に」
「え?」
「ど、したら、よかっ、たの」

このあほが、勉強はできるくせに本当に馬鹿だな。そういうことは早く言えよ!そんなことのために無理して外に長居しやがって、他にいくらでも方法はあるだろうが。

「やっぱ馬鹿だよ、お前」
「ひっ…、シズ、ちゃ」

馬鹿だ馬鹿だ、お前も俺も。




「俺の家ここの近くなんだ、けど」


臨也が驚いた顔でこっちを見てきた。
来るかって聞ききる前に臨也はぎゅって抱きついてきた。


早くこうすればよかったのか。






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落ちてない…?すみませ…。






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