「いいから俺に任せときなって」 「でも…、臨也兄さん、」 「まあまあ」 幽くんと二人、スーパーからの帰り道、最近やたら帰りの遅いシズちゃんが公園で暴れていた。 やっぱりこんなことしてたんだね。 「静雄兄さんっ」 「おお、みごと、みごと」 敵はとっくに戦意喪失、でもでもシズちゃんは止まらない。だって、シズちゃんだもんね。 「あぶないよ、幽くん」 止めに行こうとするので、止める。ああゆうのは、本人の気のすむまでやらせておくのが、一番。 まあ、シズちゃんがやりたくてやってればの話だけど。 「でも、」 シズちゃんはけっこうぼろぼろだ。まあそうやって強くなるのが彼のやり方なんだけど。 「じゃあ俺が止めるからね、それでいいでしょ」 「でも、…、」 「それ、よろしく、冷凍食品なんてとけちゃうからさ」 じりじり視線にもろもろを込めて言えば、こくりと、ひとつ頷いて幽くんは歩みを戻してくれた。いいこ、いいこ。 「シズちゃん」 「…」 「しーずちゃん」 「その呼び方はやめろって言ってんだろ!」 「良いからこっちおいで、シズちゃん」 「死にてえみたいだな…」 瓦礫の山に佇むシズちゃん、周りにはたくさんのひと、みんな倒れてるけど。 うるさくて死んじゃいそうなほど、頭をガンガン回る悲鳴、シズちゃんの悲鳴。 双子なんて、本当に不便、それでもシズちゃんは特別。だって、俺の片割れだもん。ちがう、ちがう、そうじゃなくて、シズちゃんはおれの、 殴られる、痛い、げほげほ、今日の俺は(それこそ幽くんにバレバレなくらい)もともと死にかけてるから、くらくら、死んじゃう。 でも、シズちゃんはそれでこっちに来てくれる。戻ってきてくれる。 シズちゃんの目が、ぱってなって、こっちに駆け寄ってくる。俺のずるいやり方。 シズちゃんを傷つける、それでも一番早くシズちゃんに帰ってきてもらう方法。 「臨也…」 「いいからやめな」 「臨也、顔色わるい」 「そうだよ、俺の具合は今日さいあくなんだ」 「いざや」 「だから、早くこっち来て」 しんどいから座ったままで、ふらりふらり、こっちにやってくるシズちゃんを抱きとめた。 手で身体を舐めまわす。どこが泣いているのかな。 今日もまた傷がいっぱいできてる。馬鹿だ、馬鹿、シズちゃんはばか。 小さい傷、色んな傷、手を掠めるたびに俺もどんどん痛くなるんだから。 最後に頭を抱え込んでぎゅうぎゅう俺の心臓に押し付けた。 そうしたらシズちゃんはこどもみたいに泣きだすんだ。って俺たちまだまだ子供なんだけどね。 「だいじょうぶだよ」 「やめろよ…、なんでお前が、」 「そんなの、簡単なことだよ」 俺は、君のお兄ちゃんですから 「どんなに嫌でもそれは変えられないんだからね」 ふわふわとゆれる、いつの間にか金色になってしまった君の頭にチョップしながら、笑うのに、シズちゃんはまた一つ大きく泣いた。 ______ ブレーキなお兄ちゃん、なのに病弱とかに萌えを感じます |