木曜日の3限に臨也が居なかったら、要注意。

なぜなら、そのひとつ前は体育だからだ。


昼休みになっても戻らなかったら、厳重注意。

俺は保健室へと足を運ぶことになる。


双子っていうのは大抵別々のクラスに入れられるものだ。
俺たちは似てもいないのにやっぱり同じクラスになったことが今まで一度もない。

それは高校に入った今でも変わらず、それぞれに新しいクラスでそれぞれに新生活を始めた。
俺は小学校の時の友人であった新羅とクラスで偶然にも再会をした。俺はこのとき初めて、臨也と新羅が中学の時にすでに友達になっていたことを知った。世間は狭いものだ。俺の知らないうちに、いつ、どうやって。
まあいい。そちらはあまり問題ではない。
そしてどうやら臨也は門田という男と仲を深めているらしい、というのが4月。

昔から変な奴を引き寄せる臨也だから、最初俺は相当に警戒していたのだが、つきあってみれば門田は相当良い奴だった。見かけはちょっと不良とか番長っぽいけど、まあそれは俺が言えた話ではない。


そんなわけで、最近じゃ4人でつるんでいる。臨也は門田に、ドタチンとか変なあだ名をつけて相当なついている。
門田はその呼び名を嫌がっているけど、臨也が懐くこと自体は、まんざらでもないらしく、保護者のように甘やかしている。
俺はその辺も気が気じゃなくて、(もちろん臨也がこれ以上の駄目人間になってしまったらどうしてくれる、という意味でだ)あまり臨也を甘やかすなというのに、どうも聞き入れてもらえない。まあ、門田は良い奴なので俺も強くは出れないのだが、それが余計にもやもやするっていうか、なんというか…。


で、だ。

いつも暇なら4人で集まって飯を食ってるわけなんだが、



「臨也は?」

「…3限から居なかったぞ」

「そっか」

そういえば、朝から少しだるそうにしていただろうか。

「静雄、様子みにいかないのか?」

「ああ、後でちょっとのぞこうかとは思ってんだけど、」

俺が臨也のとこに行くのなんて、ほとんどいつものことだ。
わざわざ催促してくるってことは…、

「門田たちも行くか?」

「いや、俺が行っても変な気つかわしちまうだけだろ」

別にそういう訳じゃないのか。
それにしても門田は本当に良い奴だ。

「…そっか。新羅は?」

「え、僕?別に臨也の生態とかまったく興味ないんだけど」


新羅は相変わらずの変人だ。これでも臨也とは結構仲がいい。どうしてなんだは、いまだにさっぱり分からない。


「わかった、じゃあちょっと行ってくるな」

最後の一口のご飯をかきこんで、結局俺一人で向かうため立ち上がった。

保健室というのは十中八九一階にある。怪我人をすぐに運ぶためだ。そしてなんとなく隅っこにある。人が休む場所がうるさくては適わない。

俺も臨也も、兄弟してここには通いつめてる。利用目的は全然違うけど。
そんなわけで保健医とは顔なじみになりつつある。


「失礼します」

昼休みの喧騒とは無縁の、停滞しているような空間に足を踏み込む。
俺の顔を見て、怪我人を連れていないことを確認するや否や、保健医は無言で俺を迎え入れた。

三つ用意されている白いベットのうち一つだけ、一番奥のベットだけがクリーム色のカーテンで仕切られていた。
カーテン越しに日のあたるそこは臨也のお気に入りの場所だ。

「臨也」

一応声をかけてから開ける。

「しずちゃん、どうし、よう」

「なに」

「いき、くるしい」

臨也は枕をだっこして丸まっている。いつもの体制のうちの一つだ。

顔色が酷い。呼吸が細い。
枕に顔を埋めて深呼吸しているようなのに、とにかくゆっくり吸ったり吐いたりしているくせに、酷く息苦しそうで、そのアンバランスさに俺はいつもどうしようもなくなる。

「なんかね、体育のあときゅうに、ぐわーってきちゃって」

「もうちょっと早くどうにかならなかったのかよ」


「むり、っていうか、いき、できなっ、い」

出来てるじゃんと、いう突っ込みは心に納める。一回それでマジギレされたからな。


枕をぎゅうぎゅうに締め付けるその指が力のせいで白くなってる。



「お前、薬飲んだのか?」

「ちがくて、なんか、そういうのじゃ、ない」

また一際身体をこわばらせた。

「きもちわる、い」

「え、吐く?」


「ちがくて、なんか、…っ、はあっ、やだ」

「ちょっと落ち着け?」

「なんか、…っ、へん、」

「変って、いつもじゃん」

「そうだ、っけ?」

「そうだよ」


俺よりも一回り小さい身体を枕ごと抱き込んで、ゆっくりと背中を叩いた。

もちろん、そんなことで収まるはずもないのだけど、(だいたいこいつは3限中ずっとこんな調子だったんだろう)、これは俺と臨也の自己満足なまじないなので問題ない。


「もう、ぐるぐるするし、きもちわるいし、さいあく」

また、びくんとしては、息を一層あげて、何かに耐えるように眉根がよる。
何が起きてるかさっぱり俺には分からないのだが、それが知りたいなら新羅でも連れてくればいい話だ。

そういうことじゃなくて、


ただそばに居れたらって思ったんだ。それだけの話。







昼休みが終わるころ、俺は教室に戻った。
臨也は相変わらずで枕にうずまっていた。




放課後になって、門田と俺と、ついでの新羅とで、保健室をもう一度訪れた。

さっきよりは断然ましになっていたが、まだ生白い顔で臨也はそこにいた。

ほとんどサボりだよ、なんて笑う臨也に門田がまた頭をぽんぽんしながら甘やかしの言葉を吐いている。臨也はそれを、素直にうれしそうに、そしてどこか恥ずかしそうに切り返していた。




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息切れした臨也くんを書きたかっただけ^ω^本当ひどい趣味でごめんなさい
今度は来神イントロでした、四角関係の予感!笑




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