「シズちゃん、ごめん!もうそんな時間だっけ?」 「いや、食べたくなったたから勝手に作ってた」 家に帰るとキッチンでシズちゃんがおたまを振り回してた。シズちゃんが持っていると相変わらず魔法の使えるステッキみたいだ。 「待っててくれれば作ったのに」 手を洗って俺も応戦する。今夜は俺がご飯をつくる番。 「いや時間かかるし」 「そうかな?」 「そんなんだから臨也の煮物は…」 「うわ、ひど!俺の煮物は食えないと。さすがシズちゃん言ってくれるね」 「だって野菜の切り方とか適当すぎだろ」 見れば、いつものことだけど、まったく同じ大きさに野菜が切り揃えてあった。しかも火が通りにくい順に並べてある。 「シズちゃんが丁寧過ぎるの!むしろ遅いの!」 「でも火が通らなかったりするし」 「はーもういいよ、煮物は任せた!あとは何作るの?」 どうやら何も考えてなかったみたい。シズちゃんはぽかーんとした後すぐ困り顔になった。 「臨也は何作る予定だった?」 「トマトクリームパスタ」 「…それは合わなそうだな」 「うーん、ね、冷蔵庫にあるので作れるのはねえって、ひっ!」 「ん?」 「魚!なんで入れっぱなの!」 「ああ、わり、おいしそうだったから買ってな、」 「いいから、これ!どっかやって!」 「相変わらずひどいな、これが怖いか?」 「ひっ、や、やだって」 「ほらー怖くないぞ」 「ふっ、シズちゃんのばか!」 「わっ、泣くなよ」 「怖いって言って、るのに!」 「悪かった、ごめんな」 俺の頭をいい子しながらシズちゃんは魚を奧に引っ込めた。そんなことで許してしまう俺もどうなんだろうね。 「もう…あ、お味噌汁つくろっか」 「おお、いいな」 「なすがある、油揚げも」 「おいしそう」 「じゃあ決まりね」 「出来た!」 「えっ早」 「こんなん切ってちゃかちゃかやるだけじゃん」 「臨也の切る早さは尋常じゃないよな…」 ご飯作り歴何年だと思ってるんだ。毎日ご飯を作る為にはこれくらいの大雑把さが必要なのだ。シズちゃんはママのご飯ばかり食べて育ったに違いない。 「はいはい、ところでシズちゃんの煮物の方は?出来た?」 「うーん、びみょう」 そちらを見れば味見をしているシズちゃんは小皿を片手にお箸をもう片手に首を傾げていた。 「俺にも味見させて?」 「おお」 うわ!この人、お皿を渡せばいいものを、お箸に挟んだにんじんを直接差し出してきた。これだから天然は! 恥ずかしい、けどこれってもしかして結構なチャンス? たぶんシズちゃんは意識したらこんなことしてくれない、し。よし。 「ん、美味しい」 「本当に?」 「シズちゃんももう一回食べてみなよ、ほら、あーん」 シズちゃんの好きなごぼうを口元まで差し出してみた。さっきシズちゃんがやったみたいに。 「っ!てめ、なに恥ずかしいこと言ってんだ!」 「自分だってやったくせに」 何を意識したのかシズちゃんは途端、顔を真っ赤にしてわたわたしだした。 「俺はべつにそういう意味じゃっ!」 そういう意味ってどういう意味だよ。本当にシズちゃんは面白い。 「じゃあ別にいいじゃん」 「で、も、恥ずかし」 「ほらほら、間が空くほど恥ずかしくなるよ、あーん」 「う…、んん」 そうそう、人のお箸から食べるのって思いの外恥ずかしいんだよね。 「どう?」 「…ふつうだ!」 「そう、じゃあ完成ね。よそってならべちゃおう」 「シズちゃんったら…」 いつの間に用意したのか、メインディッシュは焼魚だった。しかも器用に海苔を細く切って魚は目隠しされてた。 おもわず頬がゆるむ。 こんな幸せな日がいつまでも続けばいいな。 「「いただきます」」 -------- 一緒に料理であーんということでベタ甘にしてみました。あと魚の目ネタがやりたかっただけです。あーんがあきらかにフライングですねw もちろん返品可能ですが、素敵なリクエストありがとうございました! |