※ぎりぎり恋人未満な二人



 大丈夫 、

そんな訳なかったのに。
俺は、自分が混乱していて、現実を認めたくなくて、俺以上にそうであるはずのそいつに手を差しのべるどころか、すがったんだ。







その時臨也を見つけたのは本当に偶然だった。
一目見れば粗方のことが分かるような惨状だった。

臨也は俺が何も言う前に大丈夫だと笑った。

そこは俺の家のすぐそばで、シャワーだけ貸してくれない?という臨也の申し出に、何か思考する前に、俺は頷いていた。

あの臨也だもんな、大丈夫なんだ、なんて。

その言葉にすがった。




家に着くまでも臨也は全くもって臨也であって俺はほっとしていた。
相変わらず口はペラペラと回り閉じることはなく、さすが臨也だとしか言いようがない。


「じゃあちょっと借りるね」

普段と何ら変わりない姿に何の疑問も懐かなかった。
俺の中ではもう何もなかったことになっていた。
きっと臨也だってそれを望んでいる。
これで臨也が風呂から上がったら本当にリセット。俺たちは今まで通り、付かず離れずな関係を続けるんだって。




がたんという大きな音が風呂場からして思わず何も考えずに扉を開いてしまった。


床に落ちたシャワーのノズルから水が暴れていた。
その真ん中で臨也が嘔吐しながら崩れ折れていた。
震える体を伝う沢山の滴と、吐瀉物、
周囲には点々と白濁が水に溶けることなく散在している。

この白濁は知りもしない男のものなんだ。
そいつが臨也に、欲情したのか。この細くて白い腕に?脚に?うなじに?

言葉にしただけで鳥肌が立つ。

臨也はそれを実際に受けて、
…大丈夫?大丈夫な訳がない!


ぐっと両の手で押さえつけられた口から鈍いうめきがこぼれる。
見ていられなくて、思わずバスタオルを上から投げ掛けた。

その上から抱き締める。
体かびくりと跳ねて震えか引かない、からそんなこと忘れる位に腕の力を強くする。




「こわかっ…た…」

消え入るような声に抉られるような気持ちになる。

どうか、時を少しだけ戻せるなら、真っ先にこいつを抱き締めさせてほしい。そうするべきだった。




「はじめてはシズちゃんがよかった、なんてね」
おどけた口調の割りに、声は震えているものだから、俺は少しだけ泣いてしまった。



    (それは苦い恋心の自覚)





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ただ強がってる臨也を吐かせたかっただけ←
モブが消失…しかも静雄さん助け損ねてる…?
すみません、もちろん返品可能ですのでお気軽にどうぞ!
モブ臨と言えばそれはもう好物でして本人は大変楽しかったです。素敵なリクエストありがとうございました!



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