折原臨也。その存在を知ったのは最近のことでもない。その姿は何度か学校で目にしたことがあった。とんでもなくきれいなやつが居るもんだと思っていた。でもその名を知ったのはこの春のことだ。

折原と同じクラスだと分かったときは飛んで喜んだが、実際折原は近づき辛い雰囲気をかもしているし、そもそも俺は友達をつくれるようなタイプじゃないんだった、どうにもこうにもならず夏休みが空けてしまった。

あちい…

9月だというのに暑い。信じられないほどに暑い。

久しぶりの満員電車に体力をいつも以上奪われる。一週間の始まりの疲労が二酸化炭素に乗って車内に充満している気がする。


扉が開くと同時にむわりと不快な湿気の風に包まれ、逃れようのない蝉の喚きに放り込まれる。コンクリートのプラットホームが陽炎のようににじんで揺れる。
秋はいつになったら来るのだろう。

どこにこんなに詰まっていたのかと思ってしまうほどに雪崩出てくる人の波に乗って進む。と、ふらりゆらり揺れる人影が目に入った。
あれは、

「折原……?」


やっぱり人目を引くやつだと思う。背中だけで目を奪われる。それにしてもこの熱に溶けてしまいそうな足取りだ。

朝日に睫がすけてきらきらしている。折原の横顔が特に良いと思っている。勝手に思っているだけでどうにもならないんだけど。

「おい!」

俺の独りよがりな妄想をよそに、折原が崩れ落ちた。え?なにが起きたんだ?折原は起き上がらない。それどころか動かない。やばいだろ、やばいだろ?なんで誰も立ち止まらない?
誰もが一瞥を送りながらも足早に過ぎていくだけだ。


「大丈夫か!」


駆け寄っても反応がない。意識を失っているようだ。

ええとこんな時はどうしたらいいんだ。

とにかく場所を移そうと担ぎ上げた。

細い。軽い。ああ、俺はいま折原に触れているのか。

意識すると熱くなってしまう。こんな時に何考えてんだ俺は!

ひとまず一番近くのベンチにそっと寝かせる。こんな時ばかりは自分の馬鹿力に感謝する。


熱中症だろうか。日陰のここでさえじわじわと熱が迫ってくる。電車の中もひどく蒸していた。ええと、それなら冷たい飲み物がいいのだろうか。目に入った自販へ走る。

戻っても折原は意識を戻さないままだった。冷やしたほうがいいだろうと首筋へ買ってきたペットボトルを当ててみた。


折原の目がうっすらと開いた。びくついて思わず後ずさる。

「君……」

「あ、えっと……」

一気に頭が冷えた。折原にしてみたら見知らぬ男にこんなことをされて(辛うじて同じ制服なのが救いだが)、気味が悪いに違いない。

「俺、学校、行く」

自分の分のカバンだけを掴んで後ろ向きに歩く不振な俺に折原は言った。


「ありがとう、平和島静雄くん?」

その時の気持ちを、俺は一体どう表現すればいいんだろう。なあ。



_____

臨也がクラスメイトの名前ぐらい把握してないわけないよ、静雄くん、という…

すみません><
熱中症から妄想し過ぎてリクエストとはだいぶ内容がずれてしまっている気がするんですが、それに気づいたのが書き終わってからだったんです……
ご返品などはお気軽にどうぞ!
たいへんおそくなりました、リクエストありがとうございました!すっごく楽しかったです^^熱中症かわいい



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