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この広い海にある食べ物は私が生まれた地より美味しいものが沢山ある。流れ着いた港町で町全体を一望できる丘の上にある建物の屋根の上から盗んだドーナツを食べていた時のことだった。港に一隻の珍しい船が着港した。今まで見た事のない形状の船を物珍しく見ているとその船から男たちが数人出てきた。その中に白い毛むくじゃらのクマがいた。服を着ていて男達と会話をしている。もしかしたら母と同じミンク族かもしれない。もしそうならゾウへの行き方を彼は知っているはずだ。そう思うといてもたってもいられず私は食べかけのドーナツを口に押し込み彼目掛けて空を駆けた。この数年でいろんな奴からから逃げていたらいつのまにか空を走れる術を身につけていたのだ。

タッタッタッと空を駆け白くまたちの目の前に着地すれば、彼らは少し驚いて警戒するように身構えた。

「なっなんだ?!」
「空から猫耳娘が降ってきた!?」
「いや、犬耳じゃないかあれ?」
「キャ、キャプテンどうする?!」

白くまは少し怯えたのを見て私はしまったと思った。私を怖がって逃げ出したら困る。私は慌てて自分が無害だとアピールすることにした。

「私は敵じゃない。君と話がしたいだけだ。」

そう言って白くまを指差すと彼は「おれぇ?」と小首を傾げて私を見た。彼の問いに頷けば、白い服を着た男2人は意外そうな顔をして私と白くまを交互に見た。しかし黒と黄色の服を着た男はジッと私を睨んだままで、私と白くまの間に遮るように立っている。
一歩近づくとその男は刀を構えた。

「……戦うつもりはない」
「どうだか。お前、"雷拳"屋だろ?億越えの賞金首がうちのベポになんのようだ」

“雷拳”とはいつのまにかついた私の通り名だ。おそらく彼は私の手配書を見たことがあるのだろう。文字がろくに読めない私はあれになんと書いてあるかはわからないが…。
手配書の人間は信用されないというのは長年の経験から理解している。別に彼との話は秘密にしなければならない内容でもないのでその場で私は説明を始めた。

「もし彼がミンク族で"ゾウ"への行き方を知っているのなら教えて貰いたいだけだ」
「なんだお前、ゾウに行きたいのか?」
「ベポ!」

刀を持った男が白くまにそう言うと白くまはシュン…と気を落とし彼の後ろに隠れて黙ってしまった。

「私はゾウに行かなきゃならないんだ。彼と会話をさせてもらいたい」
「なぜ俺らがタダでお前に情報を渡さなきゃいけないんだ”雷拳屋”」
「見返りが欲しいのか?金か?それとも体で払うか?ミンク族の君。君は何を求める?」
「おい、こいつは俺の部下だ。話があるならまず俺を通せ」
「……チビスケ、そのミンク族の男と話すには何を差し出せばいい?」
「……」

そういうと刀を持った男は眉をしかめた。私より身長が小さいのは事実なのになぜ不機嫌になるのか。白い服を着た二人は非常に焦った様子で我々のやりとりを見ている。刀の男はずっと閉じていた口をゆっくり開いた。

「お前の首にかかった金額と同じ1億ベリーをこの船の前まで持ってこい。」

彼はむすっとした表情でそう言い放った。私の懸賞金は1億ベリーあるらしい。大きな数字はよくわからないから困ったものだ。とにかくいっぱい持ってくればいいのだろう。私は白くまを見てから刀の男を見てうなずいた。

「わかった。とってくる。」
「とってくるって……え?おいちょっと!」

白い服の男の言葉は無視して私は街中に向かって走った。たしかこの島には金がいっぱいある建物…銀行があったはずだ。大きな袋いくつあれば足りるだろうか?






「キャプテン~いいんすかぁ?」
「気にすんな。この島のログは2時間で貯まる。あいつが戻ってくる頃にはこの島からおさらばさ」
「でもキャプテン…あの人にゾウの行き方教えなくていいの?」
「あぁ?なんでそんなお人好しなことしなきゃなんねぇんだよ。」

あの気に触る女がすぐに戻ってくるとは思えないが、とっとと用を済ませてこの島を出て行こう。俺はシャチとペンギンとベポを連れ町に向かった。物資の補充なら前の島で十分に行えていたが、一部の薬品だけ手に入らなかった。この島の薬局にあるかもしれないという淡い期待を持って訪れた。ついでにこいつらが本が欲しいと言うので本もいくつか買うつもりだ。この島の反対側には海軍の駐屯所もあるし長居は無用だ。俺たちは手早く買い物を済ませすぐに船に戻った。

「ログはあとどれくらいで溜まりそうだ?」
「もう数分くらいですね。」

操舵手の返事を聞き俺は船員達に出航の準備を促した。エンジンを始動させる音は心地よい。するとベポがどたどたと足音を鳴らしながら走ってきた。

「キャプテーン!あの人が船の前まで来てるよ!」

ベポに呼ばれて甲板に出てみれば桟橋には大きな袋を4つほど持ったあの犬耳女がそこに立っていた。服には先ほど見られなかった血がついている。おそらく返り血だろう。彼女は俺を見ると声を上げた。

「金!持ってきた!私は大きな数が数えられないからお前が数えてほしい!多分言われた数はあると思う」

町の方を見ると何やら騒がしい。まだかなり遠いところだが、海兵がこちらに向かって走ってきているのが見える。俺は甲板にいたペンギンとシャチに袋の中を確認するよう命令する。二人は桟橋に降りて彼女の持ってきた袋の中を見た。本物です!とシャチがこちらに向かって言った。金が本物ならあの袋の量から言って1億ベリーは十分にあるだろう。二人は袋を持って甲板に戻る。二人には船内に戻るように言って甲板には俺とベポ、桟橋には女だけになった。海兵たちはだんだん数を増やしこちらに向かってくる。

「ミンク族の男と話さてほしい」
「後ろにいる海兵を全部片付けたらな」

そういうと彼女は後ろを振り返った。海兵を視認したのだろう。ゆっくりと桟橋から離れて海軍のもとに走っていった。俺はその背中を見送りベポをつれ船内に入った。

「出航するぞ。沖に出たらすぐに潜水しろ」
「キャプテン、あの人はいいの?」
「騙される奴が悪い。なんだベポ。お前あの女が気になるのか?」

そう言うとベポは少し俯いたあと首を振った。

「ログ溜まりました!出航します!」

操舵手の声に各々配置につき船が動き出した。
俺をチビ扱いしたあの女に心の中で中指を立てて俺は船長室に向かった。
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