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「……大変、39度近くも熱が出てるわ」


電話を受けてすっ飛んできたお妙が手際よく神楽を着替えさせ、その口に体温計を突っ込んでから数分後。引き抜いたそいつが示した数字は38度8分だった。


「インフルエンザ並みじゃねーか」

「神楽ちゃんが川に落ちるなんて……。何があったのかしらね」

「どーせアレだろ、また総一郎くんと喧嘩して落ちたんだろ」


いつものことだ、と溜め息を吐き出してソファに横になる。昨日は「おそば奢ってもらえたアル〜」なんて言ってにこにこしながら帰ってきたくせに、一晩明けたらまた喧嘩か。とことん奴らはお互いガキらしい。


「大丈夫ですかね、神楽ちゃん……」

「大丈夫だって、マウンテンゴリラだから」

「誰がマウンテンゴリラだこの天パァァ!」

「いや違っ、お前じゃな……ぶほえっ!!」


謂われのない誤解が生じたおかげでお妙の強烈なボディーブローを全身で受け止め、俺は床に倒れ込んだ。お妙はバキバキと指を鳴らしながら何やら黒い微笑を浮かべる。


「こんなちゃらんぽらんな男に神楽ちゃんの看病ができるとは思えないわ。私が泊まりがけで看病します」

「はあああ!?正気ですか姉上!」

「おいおい冗談じゃねーよ、一晩中マウンテンゴリラ2匹と同じ屋根の下で生活なんて、下手すりゃ銀さんまでマウンテンゴリラ菌に……ぶふっ!」


新八の耳元で囁いたはずの毒は本人の耳にも届いたらしく、俺は本日2回目のボディーブローを受けて今度こそ床に突っ伏した。


「新ちゃん、心配しなくても大丈夫よ。何かされたらすぐ血祭りに上げるわ」

「あ、その点は全然心配してないです」

「こんな貧相な乳じゃ欲情なんてしねえよ」

「あら銀さん、何か言いました?」

「イエ、何も」


やれやれ、と肩を落として椅子にもたれる。新八は明日お通ちゃんのライブがあるとか何とか言って家に帰って行った。神楽は押し入れで寝ているので、実際この空間は俺とお妙の二人だけ。なんだか妙な空気が流れる。


「神楽ちゃん、早く元気になればいいですね」

「……そうだなァ」

「ふふ、なんだかカップルみたい」

「……は!?」


突然お妙が爆弾発言を切り出して俺が思わず声を上げると、お妙はにこりと微笑みながら

「神楽ちゃんと沖田さん、カップルみたいに見えるわ」

と言葉を続けた。


「ああ……そっちね」

「あら、何がです?」

「いや何もねーけど」


ぷい、と顔を背ける。変な人、と笑うお妙。なんか調子狂うなァ、なんて考えながら、俺はさっき新八が買って来たジャンプを開いてごまかそうと思いました。アレ、作文?









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