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走って走って走り回って、気が付けば河川敷にしゃがみ込んでいた。秋口の川沿いは少し寒い。くしゅん、とひとつくしゃみが出て、体を抱えるようにちんまりと縮まる。


(……ああ、私、おかしいヨ)


じわじわと胸の奥が痛い。下手すれば吐きそう。何がなんだか分からない。わたし、びょうきなのかな?ぐるぐる脳内を回るのは、あの女の人がサドの腕に絡み付いて「総悟さん」と鈴のような声で呼ぶところ。思い出したくないのに、目を瞑るたび脳裏にちらつく。


(むかつくアル、あの糞サド野郎)


溜め息を吐き出して、ゆらりと立ち上がれば立ちくらみで頭がくらくらした。目の前は真っ白になり、足元がふらつく。ついてない、こんなときに。

──とん。

不意に、小さな力で肩が押された。ふっと嫌な浮遊感が背をなぞり、さらに重力が容赦なくのしかかる。白む世界が少し晴れて、スローモーションのように流れて行く景色の真ん中、豆粒みたいに小さな人影が見えた。


──どぼん!


青かった空が灰色に沈む。赤い太陽は青に染まる。こぽこぽと私の唇からこぼれ落ちる空気のかたまりは、小さな泡となって浮かんで消えて行った。

最後に見えた冷たい微笑みだけが、私の白んだ脳裏に色濃く焼き付いていた。









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