俺専用充電器
ぎゅう、と柔らかい体を抱きしめれば、腕のなかのそいつは赤い頬を膨らませて「うー」と唸る。しばらくはじっとしていたのに、いまさらじたばたと暴れだしたそいつの耳元で低く「酢昆布、」と漏らしてやれば、観念したようにまたおとなしくなるわけだけど。
「な、なんでこんなことするネ……!」
「さあ、何でかねィ」
またぎゅうっと抱きしめた。ふわふわとシャンプーのにおいがして、なんだか眠くなる。
「俺のお願いごと、きいてくれたら酢昆布やらァ」
なんて言ったら見事に食いついたバカでにぶいチャイナ娘は、とろんとまぶたを落としかける俺の腕のなかで焦ったように口を開いた。
「お、おい寝るなヨ!この体勢で……」
「これもお願いごと」
またきつく抱きしめる。相変わらず恥ずかしそうに俯いたままのチャイナがかわいくて、愛おしくて、やっぱり眠い。こんなにも安心できるのは、この体温があの人に似ているせいなのかもしれない、なんて。
「お、お願いきいたら酢昆布くれるって、本当だろうナ……?」
「やらァ、そんくらい」
「嘘だったらぶっ飛ばすぞコノヤロー……」
「別に構わねえよ」
ふわりと風が吹き抜ける。それはまるで、俺の背中を押すように。
いまだにチャイナは腕のなかでぶつぶつ文句を垂れていて、なんだか少し笑えた。ああ、もうこの際、あとからこいつに殴られても別にいいや。
だからせめて、あともう少しだけ、
このまま愛を充電させてくださいよ。
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なにげにミツバ編後。