お互いにボロボロになった俺達は、くだらない口喧嘩を繰り広げながらも小高い丘に上がった。やはり空は濁っていて、星なんて見える様子はない。


「やっぱり曇ってるアル……」


しゅん、と肩を落とす姿がかわいくて思わず写メった。そしたら「なに勝手に写メってんだバカヤロー!」とかなんとかまた喧嘩になったもんだから丘の上で奴にアッパーカットかましてやったらドロップキックで仕返されてそのまま倒れる。俺の真上でチャイナはドヤ顔してやがって、それも撮ってやったら四の字固めを繰り出されたからさすがにギブアップをコールした。


「お前の趣味は盗撮だったアルカ!?お前のSはサディストのSじゃなくてスケベのSだったアルカ!?」

「なーに言ってやがんでィ、男はみんなスケベのSだぜィ」

「そんなの嘘ネ!」

「ほんとだって。オメーがただ自覚なさすぎるんでィ」


こんなに可愛いのに、周りのぎらつく目に気付かない俺の想い人。そんなところも可愛いと思うが、もう少し自覚持ってもらわないとちょっと心配になるだろコノヤロー。


「……サド?」


ぼーっとしてるヨ、大丈夫カ、と心配そうに青い瞳が俺をうつす。あー、やっぱり可愛い。もうどうすりゃいいんだこの気持ち。さっき「かっこいい」って言われてからどうもおかしい。実は脈ありなんじゃねえの、なんて。


「サド、どうし……」

「チャイナ、可愛い」

「……はっ!?」


ふわふわ、スカートが揺れる。パンツ見えるぞバカ、俺以外に男がいたらどーすんだ。なんて考えながら、かあっと真っ赤に頬を染め上げる自覚の無い可愛い想い人の腕を引くと、その華奢な体は簡単に俺の腕のなかにおさまった。


「さ、サド……」

「……何」

「ななななにこれ」

「寒そうだなーって思って」


ぎゅう、ときつく抱きしめると案外おとなしくチャイナはそこにおさまっている。耳まで真っ赤で面白い。たぶん俺もだけど。


「……寒くなんかないアル。むしろ、熱い」

「うん、俺も」

「……じゃあ離せヨ」

「やだ」


熱いけど、熱くて熱くてしょうがないけど、思った以上に抱き心地がよかったから、しばらくはこのままで。


「……俺、オメーのこと好きだぜィ」


なーんて、このタイミングで言えたなら苦労はしないのに。言って断られたときはどうしよう、なんて打たれ弱いSのハートが邪魔をする。ああ神様、俺に告白する勇気とチャンスをください。


「……サド、」

「……何でィ」

「お前の心臓の音、早すぎヨ」

「オメーが好きなんだからしょうがねーだろィ。……あ」


「……え」



……え、ちょ、待っ、えっ、神様アア!?

急すぎません?ちょっと急ピッチで実行しすぎじゃありません!?

俺は慌ててチャイナを引きはがした。


「い、今のナシ!今の忘れろィこの糞ボケアホチャイナ!」

「えっ、わ、忘れたくないアル!」

「……なっ……!?」


お互いに赤く染まる頬。こいつ自分の言ってる意味わかってんのか、なんてパニクる俺の顔をまっすぐ睨んで、チャイナは叫んだ。


「私だってな……、オメーのこと好きなのかもしれないアルこの糞ボケサディストぉぉ!」

「ごふっ!」


俺の腹部を一発殴って、そいつはばたばたと走って逃げて行く。ってかなんで殴ってんだよ、いてーなオイ。


「……言い逃げとはいい度胸じゃねーかィ、あの糞女」


殴られたけど、かっこわるい告白だったけど、なぜか気持ちは軽い。呼吸を整えてからにやりと口角を上げて、俺は走り出した。追いついたら何しよっかなァ、なんて考えながら。

いつのまにか雲は晴れて、頭上を流れる星屑が俺達を見守っていたことなんて、たぶん誰も知らない。



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星の降る夜に願いを

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まとまりない…





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