迷走気味のライクに一礼


木漏れ日がそいつの白い肌に触れて、無意識のうちにそれを制した。いや、断じてこいつの近くに歩み寄る口実に仕立てたわけではなくて、ただこいつは日の光に弱いからそれを配慮した上でとった行動であり特別な理由などない。はず。
すやすやと馬鹿面をさらけ出すその寝顔に悪戯してみても面白いが、このまま眺めているのも悪くはないなんて柄にもない考えが浮上する。サディスティック界のプリンスたる俺がこんな無防備な獲物みつけて何もせず引き下がるのはどうもむず痒さが残るが、なんとなく悪戯する気になれずそいつが寝転ぶベンチの少しあいたスペースに腰を下ろした。命拾いしたな、なんて台詞もぐーすかぴーすか寝息をたてるこいつには聞こえていないのだろうけど。
認めたくない気持ちはあるがこいつは俺と互角にやり合えるライバルであり、それ以上でも以下でもない。その関係がいちばんしっくりくる。崩したくはない。けれど俺の本心は随分と我が儘だった。必死に閉めて封じたはずの思いの蓋を下からぐいぐい持ち上げやがる。気付きたくはない。気付いた瞬間に張り付いていた好敵手というレッテルは剥がれ落ち、俺の暇を埋めてくれる心地好い喧嘩の習慣すらもなくなってしまうのだろう。
ゆっくり瞳を閉じれば隣の寝息が小さく届く。俺はまた、この感情に蓋をした。きつくきつく押し込んで。

そう、これは迷って走りすぎたライク。けっしてその境界線を越えない。

認めたく、ない。




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