ひとつ年下の悠くんとは付き合って1ヶ月と少しになる。キスはまだだ。手だって繋いだことはない。

それなのに、どうしてこんなことになっているのでしょうか。

「…、あの、悠くん?」
「なに」
「どいて?」
「やだ」


そんな風にやだって言われたら、困っちゃうなぁ。いつになく真剣なこの表情は、昔からよく知る彼が大好きな野球をしている時のものと同じ顔だ。今から打つぞってゆう、バッターボックスに立つ時の悠くんと同じ目だ。

そりゃあ悠くんは健全な男子高校生であって、まぁ、いわゆるそうゆうお年頃ってやつで。かくゆう私もそれなりに経験のある女子高生なので、私の上に馬乗りになっている彼のこの行動がどういうつもりなのかは分かる。でも両腕を拘束されちゃあたいした抵抗もできないしなぁ。一応手加減してくれてるようで痛くはないけど、ちっとも動かせないや。

「悠くん、私たちキスも、手だってまだ繋いだ事ないんだよ…なのにこれは、いきなりすぎない?」

あ、手は繋いだ事あったかも。小学生くらいの時の事だけど。あの頃は悠くんとこんな関係になるなんて、ちっとも思ってなかったな。昔から可愛かったけど、いつの間にこんなに男の子らしくなったんだろ。なんて暢気に考えていたら上から悠くんの顔が迫ってきて、目を閉じた瞬間に唇を奪われた。

「キスも、キス以上の事も、今日全部しちゃえばいいだろ」
「…、ええ?ちょっと待っ、んんっ」

本日二度目。さっきと違って深いやつ。私は違うけど、たぶん悠くんはさっきのがファーストキスだ。ぎこちないけど少し乱暴で強引で、でも私のことを好きだって思ってくれてるんだって分かる。そんなキス。

「名前さんとずっと、キスしたかったし、手も繋ぎたかった。…でも家が近所でも、学年も高校も違うのに、そんな機会なかなかねーんだもん。昔からずっと好きでやっと付き合えて…、もう我慢なんてできねーよっ、名前さんすっげぇ可愛いんだもん」


俺のもんになって。なんて耳元で甘く囁かれたら、悠くんの声が脳にまで響いて、顔に熱が集まった。心臓がばくばくしてる。

でも、視界の端にとらえた私の首筋に顔を埋めている悠くんの耳は真っ赤で、緊張のせいか私を拘束している手だけは少し冷たくて、そんな悠くんが可愛くて愛しくて。

このまま悠くんのものになっちゃうのもいいかなぁ、なんて思ってしまったりして。


本気で抵抗する気なんて、最初からなかったんだけどね。




ずっとこうしたかったんだ
実は、私も。
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